安全神話からリスク負担へ

池田 信夫

「原発を東京につくれ」という話があります。「国や電力会社は原発が絶対安全だと主張するのだから、消費地に近い東京につくればいい」という話で、もとは広瀬隆『東京に原発を』あたりから始まった話でしょうが、先日は朝日新聞の「素粒子」というコラムにも書いてあって驚きました。

これは気のきいたことを言っているつもりかもしれないが、ナンセンスです。もし千葉県あたりに原発があって今回のような津波に遭遇したら、今ごろ東京都民1000万人が避難することになって大混乱でしょう。原発事故のリスクはゼロではないのだから、いざ起ったときの被害が最小になるように立地するのが当然です。


ところが地元や反対派は「リスクをゼロにしろ」と主張し、国と電力会社は「リスクはゼロだ」と言い張ってきました。このため、ちょっとした水漏れが起こるたびに、反対派が「やっぱり危険だ」といえば電力会社が「これは安全に支障のない『事象』だ」と言い張って情報を隠蔽し、相互不信が増してきました。

今後の日本のエネルギー政策を考える場合、原発を新たに建設することは当分は無理だとしても、既存の原発を止めることはできない。安全対策を講じた上で、そのリスクについて理解を求めるしかないでしょう。その場合、大事なことは、原発は危険だという今や自明の事実を前提にしてリスク負担を考えることです。

WHOの統計でも明らかなように、死亡率でみるかぎり原子力のリスクは火力より小さい。特に有力な代替案である石炭火力と比較するときは、石炭の採掘や大気汚染の被害と原発のどちらが大きな問題か、冷静に議論する必要があります。

もう一つは経済性です。技術開発や核燃料サイクルに巨額の先行投資をして巨額のサンクコストを背負う電力会社にとっては、原発のコストは火力より安いかもしれないが、核燃料サイクルのコストは発電原価に反映されていない。ガスタービンなどの分散エネルギーにサンクコストのない企業の新規参入を認める規制改革を含めて、総合的な経済性の検討が必要です。

もちろんエネルギー安全保障という面からは化石燃料だけに依存することはできないので、原子力というオプションは必要でしょう。しかし今後は安全神話を捨て、原発の危険性を前提にして、どこまでのリスク負担にどれだけ補償が必要かという正直ベースの対話で相互不信を払拭することが必要だと思います。

コメント

  1. つくも より:

    前にもコメントしましたが
    池田先生の意見は
    大槻先生と同じ
    「原発は安全ではないが必要だ」
    というものです。
    私はこの意見には反論できません。
    http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-6c41.html

  2. gakusei_san より:

    記事の内容に賛成していますが、疑問があります。

    >WHOの統計でも明らかなように、死亡率でみるかぎり原子力のリスクは火力より小さい。

    炭鉱で働いている人は「経済的利益とリスクを比較して、リスクを自ら選んでいる」わけで、原子力の場合は「発電所に影響があった場合に、どの範囲までどの程度の影響があるか」が不明瞭で、リスクを選んだつもりの無い人間にも被害が出ることが問題なのだと思います。

  3. minourat より:

    かってMITの先生が原発のリスクを計算したことがありますが、 このモデルでは、 原発4基が同時に事故を引き起こすなどという確率は限りなくゼロに近いとおもいます。

    私には、 原発のリスクの計算はできないとおもいますが、 いかがでしょうか?

    『東京に原発を』というのは、もちろんナンセンスです。 これは、 原発が絶対安全だという主張がナンセンスであることを示すための反語と理解していました。

    しかし、 石原都知事がかって「原発を東京湾につくってもかまわない」といわれたそうで、 そうなるかもしれませんよ (この部分は反語)。

  4. hogeihantai より:

    立命館大学の大島堅一教授が電力会社の1970年から2007年までの有価証券報告書に基づいて発電単価を調査されてます。それによると火力は9.8円、原子力は8.64円ですが、原子力とセットになる揚水発電のコストを含めると原子力は10.13円になり、原子力は安いといえません。日本の火力発電のコストは世界最高レベルで、電力の大口需要家である企業は全て自家発電で自給してます。従って電力事業が徹底的に自由化されれば、火力は原子力より大幅に安くなることが予想されます。逆に原子力は今後規制が強化されコストは益々高くなるでしょう。

    原発の立地は政治的困難さのため、同じ敷地に炉を増設し続けてます。運転開始後40年になる福島第一でも7号、8号機が計画されてました。従って、一つの原発では最低でも100年間は運転を継続されると考えられます。1000年に一度しか発生しない大地震、津波でも100年間に原発を襲う確率は10%になります。事故の確率が10%もある飛行機に乗る人はいますか。今後原発を推進すべきか否か結論は出ているのです。

    私はポンプ設計技術者として電力会社とも付き合いが長いのですが、地震に対する原発の信頼性についても大きな疑問を持ってます。福島原発一号機では津波が来る前に地震で格納容器内の圧力容器に繋がる配管が破損し冷却水の喪失に到った可能性が高いのです。これは元東芝の圧力容器設計技術者が指摘してます。3月11日の原子炉のデータを何故か東電が公表しないので確認は出来ません。先日の震度6の余震でも各地の原発で機器が破損し危機一髪の事態が発生してます。実は日本の原子炉の稼働率は米国や韓国より10%低いのです。これは地震で停止し再稼動までに点検、補修、検査に時間がかかることが原因なのです。

  5. ganz007jp より:

    賛同します。
    「原発事故の可能性はゼロではない」その通りです。それを隠ぺいするから、相互不信が発生するのだと思います。

    もちろん可能性ゼロを求める人間は経済性を理解していません。
     リスクがゼロならリターンもゼロ。経済ではハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンが原則です。その中でリスクをコントロールできる人がビジネスにおいてリターン>リスクとすることができ、経済性を成立させることができるのです。

     その意味でリスクゼロを求める人は経済性そのものを理解していないと思います。ただ経済性を理解しない人も説得しなくてはならないから、政府も東電も「可能性ゼロ」という嘘をついてきました。

     でも「可能性ゼロ」と嘘をつかなくても、経済合理性に基づいて原発誘致は行われると思います。もちろん相応の代償となる金銭を原発置く土地には支払う必要ありますが…
     今までは経済合理性に基づき、福島に多額の補助金があてがわれ、雇用が確保され、原発を次々に建設してきました。
     もちろん事故を起こすと、今後誘致に賛成してくれる土地を見つけることは難しくなるし、金もかかりますが、仕方ないことでしょう。自動車保険と同じです。

    一方、原発事故を事故発生可能性や死亡者数だけでリスクを定義しようとすることには無理があると思います。「放射線」という「よく解らないもの」への恐怖が、原発事故の最大のリスク要因の様に今回感じます。

     火力発電だけに切り替えた時に、経済性としてどれだけのマイナスが生じるのか、それを他の国民が我慢できるのかをきちんと示す必要はあると思います。
    「リスクテイクして豊かに暮らすか、リスク放棄して皆で貧乏になるか。」
    という問いをはっきり議論できる環境が必要だと思いますね。

  6. bobbob1978 より:

    私は原発を東京湾に作っても構わないと考えています。
    ただそれにはいくつかの条件があります。

    ・東電や関連企業への天下りの全面禁止

    ・社長や役員の人選に周辺住民や国が参加出来る仕組みを作ること
     今回の事故では、事前からリスクが指摘されていたにも関わらず、東電はそのリスクを軽視して対策を怠って来ました。このようなリスクを軽視し利益を優先する役員たちを解任する仕組みがあれば、役員たちがリスクを軽視することへの抑止力となります。

    ・事故の際は、廃炉を前提とした事故処理を行うよう法律で義務付けること
     事故の際、即座に原発を廃炉にする覚悟で対処する決断をすることは、廃炉に伴う損害の責任を問われる可能性などを考えれば難しいでしょう。ですので、全電源停止などの場合、廃炉を前提として事故処理を行うよう義務付け、管理者が廃炉に伴う被害に関して免責される仕組みを作るべきです。廃炉に伴う被害など、原発事故が拡大した場合の被害と比べたら軽微なものです。
     またホウ酸等廃炉処理に必要な物資を原発の近隣に常備しておくべきです。

    今回の事故ははっきり言って人災です。東電は「非常用電源を分散して配置する」等のたかだか数十億円の設備投資を怠り今回の事故を招きました。はっきり言ってバカとしか言いようがありません。東電ではリスク管理やマネージメント能力があるユニバーサルな人材ではなく、関連省庁やマスコミとのネゴシエーション能力があるだけの特殊人材ばかりが出世していたのでしょう。このような状況を改める必要があります。

  7. haha8ha より:

     競争社会では、何事もlow risk low returnでしょう。(非競争社会ではhigh risk, low return?)常にリスクはつきものですし、そのためのrisk managementかと思います。
      
     いつも不快になるのが、すぐに「想定外」と発言すること。責任者の自慰でしかないです。
    逆の「想定内」なら、アウトソーシングでも機械による自動化でもいいわけです。責任者は、まず、結果を出してから「あれは想定外だった」とあとで反省していただきたいです。そのために居るのですから。
     
     認識しないだけで常にriskはあります。「北」が韓国にしたように、日本の発電所にミサイル撃ってくるかもしれないし、ブラジル沖のように宇宙線が降り注いでくるかもしれない。(実際、ハッブル人工衛星は電源落としているそうですし。)
    http://gyao.yahoo.co.jp/player/00787/v09415/v0991100000000542002/

  8. worldcomw より:

    > 原発の危険性を前提にして、どこまでのリスク負担にどれだけ補償が必要かという
    > 正直ベースの対話で相互不信を払拭することが必要だと思います。

    至極もっともですが、現状のまま成り行き任せだと無理でしょう。
    仮に東電&政府が正直ベースで話したとしても、国民が応じるとは思えません。
    とにかくダメ、なんとかしろ、電気代値上げもダメ、こんな感じでしょう。
    当然それに迎合する政党も出てくるので、政治主導も難しい。

    何より、東電&政府が正直に対話するはずがありません。
    民意の空気を読んで絵を描いて、「津波対策を追加すればリスクゼロ」と
    言い出すのが関の山です。

    具体的に何をすれば、理性的な議論が進むのか・・・
    一般市民向けの原子力ガン保険なんて良さそうですが、制度設計出来るほど
    情報開示されるとも思えませんし。

  9. galois225 より:

    今回の都知事選で共産党の小池候補は、原子力の代わりに風力・太陽光発電と訴えていた。 神奈川県知事候補の黒岩氏も太陽光発電の普及を、と訴えた。

    こういった政治家は、何も考えずに原発が危険だから、自然エネルギーをと条件反射を起こしたのか、頭脳に障害があるのかどちらかだろう。 少し考えれば、自然エネルギーで原子力を代替するのは不可能だと分かるはずで、そのことさえ分からなかったとしたら、資質に問題がある。 

    一方、石原都知事は、原子力は考えなければならない大事な問題だと発言していた。 こういう姿勢は政治家として当然のことだ。  

    問題の大きさを数値的に認識できず。 増税するより天下りをなくせ、とか、議員の歳費を削れとか、下らない感情論を吐く人間が多すぎる。 もっと物事を数値的に見られないものだろうか。 

  10. minourat より:

    > 全電源停止などの場合、廃炉を前提として事故処理を行うよう義務付け

    今回は真水が得られないので海水を使用したのであって、 廃炉にするような手段で廃炉しない手段よりよい方法は考えつかないのですが。 とにかく、 原子炉の停止後の崩壊熱は冷却で除かなければなりません。 また、冷却水を循環させなければ、 今のように大量の汚染水ができます。

    > ホウ酸等廃炉処理に必要な物資を原発の近隣に常備しておくべきです

    ホウ酸水はSLCSで注入できます。 また、 ホウ酸で崩壊熱の発生を止めることはできません。 ABWRはホウ酸を注入されても、 冷却水を浄化できますから、  廃炉にする必要はありません。

    今回の事故の原因をとり除くこと、 またの対処方法を実現する機能を追加することは技術的には難しくありません。 問題は、次はなにがおきるかです。

  11. minourat より:

    > そのためのrisk managementかと思います。

    ランダムに起きる事象の期待値が正であっても、リスクがあれば理論的にはいつかは破産します。
    これは、 期待値が右肩あがりでも、 ランダム・ウオークで原資が一度ゼロになればそれで終わりだからです。

    実は、パチンコ店はこの原理をうまくつかって利益をあげています。

    また、 ひとつ投資対象のリスクは全原資の2%以下にするというのが常識のようです。 ということは、 原発の近くに住む人は、その場所の資産の50倍の資産を持つ必要があるということです。

  12. sudoku_smith より:

    啓蒙として、電気料金の請求書に、タバコのようにそれぞれのリスクを書いた上で、単価を決めてそれを消費者に選ばせてみてはどうでしょう。日本の電力計は十分スマートだそうですから、可能かも(笑

    石炭火力 単価○円
     炭酸ガスの排出による環境破壊補償金は×円です。発海面上昇による被害の補償も積み立てます。
     また、採掘による環境破壊補償金は○円です。炭鉱事故に対する死亡事故保証、排気ガスによる肺がん治療保険のため追加料金が発生する可能性があります。

    ガス発電は上記同様でしょうね。

    原子力は
     万一、事故が起きた場合、発電所周辺への補償金が追加徴収されます。使用済み燃料の処理により△年ころに追加料金が発生します。

    自然エネルギー(太陽光、風力)
     天気が不適当な場合、供給されないことがあります。
    風力発電は周囲の動物を殺すことがありますのでその分の補償金は
    □円です。騒音被害補償金は○円です。景観破壊料金は△円です。

    水力
     ダムによる環境破壊補償金は□円です。なお、地元自治体と建設業者、政治家への賄賂も含みます。

    結局、電力会社や国にエネルギー戦略を丸投げにして来た国民がそれぞれのライフサイクルとしてのリスクとリターンを実感として(金銭的に)理解しない事には話がなかなか冷静に進まないと思います。

    原発を即時に止めろと騒ぐ人には今すぐ、その分の電力供給を止めてあげると良いと思いますよ。もし30A供給だったら、「原発の電気はお嫌いとの申し込みを頂きましたから10Aカットします。もしお好きでしたら、風力発電の電気はだいたい○円です。」

     それで、高額にも拘らず自然エネルギーを選ぶ人が多ければ、設備投資もしやすいでしょう。お金持ちが道楽でエコなエネルギーを選ぶのは別にかまいませんのでね。

  13. kotodama137 より:

    賛同します。企業は生き残ろうとするし、通産省は推進派。意図的ではないにしても、彼らは過小評価になりがちになる。本来抑制する機関がリスク管理をするべきなのに、重大事故に対応できる機関でなかった。安全性よりリスク管理ができていなかったことに驚いた。たとえで言えば、飛行機事故が起こったのに、空港に消防隊がいなくて、職員で火を消しているみたいだ。いくら技術の向上で安全性があがろうが、開港以来事故がないからといって、消防隊が無駄と思う人があるだろうか?今後原子力安全委員会のあり方が問われる。また行政もリスクの想定をしたのだろうか、していれば簡単に建設許可はしなかったろう。リスク想定をしない社会なら、原子力以外にたとえ変わっても、危険性は変わらない。

  14. bobbob1978 より:

    >>minorut様

    「今回は真水が得られないので海水を使用したのであって、」

    そこが重要なところです。いつ「海水を使用」することを決断したかがその後の事故の経過に大きく影響したと思われます。
    事故後に東電がどのような事故処理を行おうとしたかについては今後明らかにになって来ると思われますが、様々なところで言われているように、始めは「炉を温存する方法はないか?」を検討していたと考えられます。東電のこの対応を非難するのは簡単ですが、当事者であったと仮定して考えてみるとなかなか難しいことがわかります。
    廃炉にした場合、第一にその判断の妥当性を株主に問われることになります。第二に、廃炉にすると当然計画停電をする必要が出てくるため、計画停電による損害の責任を問われる可能性も出てきます。このような状況で即座に廃炉を決断出来るでしょうか?私はそれを決断出来るような人間は少ないと思います。ほとんどの人は炉を温存する方法がないかを考えるでしょう。しかし、廃炉に伴う損害に関して免責されることが判っていたらどうするでしょうか?躊躇することなく海水やホウ酸を使う決断が出来たのではないでしょうか?
    http://ja.wikipedia.org/wiki/福島第一原子力発電所事故の経緯
    によれば
    11日15時41分 全交流電源喪失
    11日16時36分 冷却装置注水不能
    12日0時49分 原子炉格納容器圧力異常上昇
    12日15時36分 建屋で水素爆発
    12日19時55分 1号機の海水注入について内閣総理大臣が指示
    となっています。
    11日16時36分に冷却装置注水不能になった際、即座に廃炉を決定しホウ酸や海水の注入に向けて行動を起こしていたら、その後の水素爆発や一連の事態を防げていた可能性があります。
    今回の事故には装置の不備以上にヒューマンエラーを防ぐ制度の不備が大きく影響していると考えています。「ほとんどの人は愚かであり、緊急事態でも保身に走る」ということを前提とした制度を作る必要があるでしょう。

  15. 学問の世界では核に平和利用も軍事目的もありません。純粋に物理学を究めたいという日本人がいたとして、本当は世界のトップレベルと同じく核兵器を研究して物質の世界の本質を究めたいのに(誤解を恐れずに言えば)現在は“しかたなく”原発という核で発電して儲けを出すという商業ベースのつまらない研究をさせられてきたのです。本来、核を研究するのは理系のトップレベルの研究者ですが、テーマが原発では、もはや湯川秀樹レベルの研究者の出現を望むべくもありません。日本人が未来永劫、人類が存続する限りにおいて、核研究を封印する権利は、現在の日本人にあると考えるのは尊大です。真理を究めたいという思いを社会が倫理的に禁止することはできません。私は今回の災難を機に、日本に“最終兵器”の研究を解禁すべきだと思います。核という危険で取り返しのつかないモノを扱うのに、商業ベースでやるか軍事ベースでやるか、どちらが安全で制御可能かは一目瞭然だと思います。

  16. minourat より:

    > bobbob1978さん

    http://w.livedoor.jp/nuclear/ の「福島第一原子力発電所 稼動状況時系列」ページのほうが詳しく、 メタクラ(M/C)等の業界用語も使われていますからより信頼できるとおもいます。

    3月12日 00時00分 には、1号機の非常用復水器および3号機の原子炉隔離時冷却系(RCIC)が稼動中です。 また、 03時33分には2号機のRCICのポンプが稼動中であることが確認されています。 ただし、1号機のドライウェル圧力が8気圧ですから圧力抑制室の水温は、100度を越えています。

    ということは、津波で非常用冷却機能が即時失われたわけではありません。 

    また、一号機は7時51分に冷水タンクから注水作業とあります。12日の07時51分から13時00分までは、冷水タンクから注水をしています。この時点では海水注入は無意味であるだけでなく有害です。

    消防ポンプで注水するためには、 炉圧を下げなければなりません。  9時に開くはずであった、 ベント弁を開くのに10時49分になっても難航中とあります。 これは、 弁を開く圧縮空気が不足したという説明がどこかでありました。  核燃料の露出はこの間に起きています。

    海水の注水 は20時20分に始まっていますが、13時以後どの時点で冷却水の注入を停止したかはわかりません。 

    とにかく、必死の奮闘の様子がよくわかります。