現在稼動している原発を止めるかどうかの議論はこれからのことでしょうが、少なくとも日本では新しい原発施設の増設は現実的ではなくなりました。とうぜん、化石燃料による発電は、資源価格の不透明性、また二酸化炭素増の問題があり、自然エネルギー利用へとむかっていくものと思います。しかし、なにゆえか太陽光発電だというにところに結論が集まりすぎているように感じます。あまりにも結論を急ぎすぎているのではないでしょうか。
どの発電方式が望ましいか、あるいはいくつかの発電方式の組み合わせ技術なのか、それはどのようなイノベーションが起こってくるかで変わってきます。
ソフトバンクの孫社長から、「自然エネルギー財団」設立、東北の復興事業としての「東日本ソーラーベルト構想」までが示されていますが、もちろん東北で太陽光パネル生産の拠点化を行えば、東北経済復興の役には立つでしょうが、問題はその後の運営がどうか、採算性がとれるのかの問題が残ります。
疑問に感じるのは、池田信夫さんもご指摘のように政府からの補助金を頼りにしなければ成り立たないというのでは、電力の本命といえるかどうかは危うさがあります。また太陽光は昼間の電力ピーク対策には有効でしょうが、天候に左右されるために発電量が安定しないという問題もあります。積雪地帯の多い東北で冬期の発電が確保できるのか、あるいは設備の保全も懸念されます。
池田信夫 blog : 再生可能エネルギーは原発の代わりにはならない
しかし、池田信夫さんのこの議論でも、「原発」対「太陽光」の二者択一のようになってしまっていることろが気になります。
自然エネルギーによる発電と言っても、なにも太陽光だけではありません。水力、風力、バイオマス、地熱などさまざまな技術がありますが、いずれにも課題があり、まだ本命だと断言できるものがあるとは思えません。
しかし、特に東北地方は、環境省が、風力や地熱、水力発電などで火力や原子力などによる現行の発電量を上回る潜在力があるとする調査結果を発表しています。
風力や地熱の潜在力大きいと発表 東北のエネルギー調査 – 47NEWS(よんななニュース) :
また最近明るいニュースが連続しているのが地熱発電です。
東芝、ニュージーランドの地熱発電所向け設備を受注 – ITmedia ニュース
「地熱」輸出、官民タッグ インドネシア試掘で円借款 (1/2ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ) :
こういった自然エネルギー発電を促進するためには、発電事業への参入障壁を取り除くことが絶対条件になります。政府主導のプロジェクトで成功したものなどはなく、発電と送電、配電で、発電の自由化を推し進めることでしょうが、まずは東北エリアに、東電エリアに売電するための電力会社設立を促進してはどうかと思います。
商社でも、製造業でも、東電以外の電力会社でも、あるいはまったく異なる分野からでもいいのですが、重要なのは事業として行わなければ、本当に必要なイノベーションは起こってきません。急ぐべきは発電方式を今決めることではなく、電力ベンチャーが起こるスキームをつくることなのです。
また、どの発電方式が望ましいかは市場が評価し、淘汰してくれます。電力自由化を進め、さまざまな発電拠点を東北にまずは集約させ、今後の東電エリアの電力を供給させればいいのでなないでしょうか。
コメント
お邪魔致します。
日本は山岳地帯、山奥にはダムを造れるところはまだ多い。
多少の自然破壊はあるもののこれが一番優しい発電。
水没による自然破壊はあるが水害対策にも寄与。
寿命も原発と優位差はないと思う、界隈の奥多摩湖は自分が社会に出た時期と同じ、もう40年以上。
地震でのリスクは大同小異だと思う。
素人考え、どうでしょうかね。
お邪魔しました。
taniyan
> 東電エリアの電力を供給させればいい
==> 東電エリアの電力を供給してもらうといい
OR
==> 東電エリアの電力を供給していただくといい
同感です。ただ、池田さんの投稿は「最初から原発NGで代替を太陽光と決めうちするのは危険だ。オプションとして原発をきちんと検討すべき」と一貫して主張しておられると思います。そういう意味では対決の構図にはなっていないと思います。ただ、この2方法だけを拾っていくとそういう風にも読めるかもしれませんね。
ご指摘のうち、地熱発電は大きなポテンシャルがあると思いますが、
温泉の源泉枯れを過剰に心配する多くの業者と、国立/国定公園内の開発規制がネックです。少なくとも公園開発規制は緩めてみるべきではないでしょうか。温泉についても源泉が出なくなったら代わりに発電所から供給してやれば良いだけの話ではないかなと思います。
それもほとんど必要ないと思いますけどね。
エネルギー源として、ベースを何にしてピーク対応をどのようにするかを考えないといけないのではないでしょうか。またベースエネルギーの不測の事態に対する対応をどうするか、つまりベースエネルギーの多様性をどうするかも必要です。更にその経済性も。
相当程度以上のエネルギーをコンスタントに生産する手段として、化石燃料と核燃料は優秀です。それは両者とも長い年月をかけてエネルギーを貯蓄し、それを持ち運べる形態で安定しているからです。対して他の自然エネルギー(化石燃料も核燃料も自然エネルギーにはかわりない)は貯蓄する安定した形態がありません。これはエネルギーが“ストックされたもの”を使うか“フローしているもの”を使うかの差です。安定したベースエネルギーがストックからもたらされるのは、現時点では当然です。だから、ベースが化石燃料(石油石炭ガス)と核燃料になるのだと思います。
だから、核VS自然エネルギーでは不毛な議論で、不安定なフローエネルギーをどうやって安定したストックに変換するか?ということになります。蓄電だけではなく、何らかの化学的なエネルギー貯蔵が経済的にできないか?というテーマの方がベンチャーらしいと思うのですが。
自然エネルギーの議論って本当に深まらないですね。もっとも他の問題もほとんどそうですが。マスコミが薄っぺらいですからね。
推進派は机上の空論で発電量ばかり言うけれど、例えば洋上風力なら海上にも着床型と浮体型があって立地がどれだけあるのか(日本は大陸棚が狭くてすぐに海溝がある)とか、台風があるんだよ(ヨーロッパは無い)とか、偏西風が安定的に吹いている高緯度地域と違って日本は季節風で風向きが違うよとか、そもそも発電力の変動をどう補うのか(リチウム空気電池に期待?)とか、バックアップに火力を使うのならそれらバックアップ設備の維持費を含めてとか、そろそろ具体的に議論して欲しい。反対派も定性的な悪口言うだけなので似たようなもの。ガチバトル希望。
そもそも大消費地から遠い東北地方で一杯電気作ってどうするのか。福島原発から東京に送電する長距離送電ロスは大変なものです。どう使う気でしょうか?アルミ精錬所でも誘致する計画とセット?
単に被災地に産業持ってこようってだけでは低レベルなバラマキと何にも変わらないと思います。
地熱発電ですか. 子供のころ, 岩手にある松川地熱発電所と葛根田地熱発電所に連れて行ってもらったことがあります.
有望とは思いますが, 欠点もあります. Wikepediaなどでわかるレベルですが,
・ 適地は国立公園が多く, 開発には困難が伴う. 正直言って景観を破壊する.
・ 地下温泉脈に影響を与える危険があり, 周辺の温泉旅館が反対する.
・ ヒ素などが混ざっている場合, 排水処理に手間がかかり, 公害や事故の危険がある.
他の発電所と異なり, ほとんど無人で運用するのが一般的です. そのため地元への経済的還元がなく, それも実現を困難にする要因になっています.
全くおっしゃる通りかと思います。
4. kenta_f0219さん。
非常に面白い視点ですね。Mgでエネルギー分配をするアイディア等が検討されているのもそれに類するものでしょうか。
ただ、懸念点があるとすればそういった変換によるロスがどの程度許容されるかという事と、あとは輸送時の安全性でしょうか。
エネルギー貯蔵はできるだけ密度を高くしないと経済的に見合わないですが、それは一方で安全性への懸念があります。水素変換などもそういったアイディアの一つと思うのですが、なにぶん扱いが難しい。
私は何らかの液体の形にできるのが輸送、ハンドリングの点でBestだと思います。中途半端かもしれませんが石炭改質(ガス化、液化)などに応用できないでしょうか。
アゴラにもこのように次世代エネルギーを自由に考えられる方がいて頼もしいです。
アゴラを代表する方が何故か硬直した考え方しかできていませんから。
何故か次世代エネルギー否定派さんたちは、原発対太陽光や原発対風力という見方で他の発電システムを否定してきます。
原発の位置にそのまま太陽光や風力が入れ替わるわけがないのに関わらずです。
孫氏も分かりやすい例として太陽光や風力を例に出してると思いたいんですけどね。
実現しようとするなら、発電や送電の自由化なしにはできませんから。その突破口として期待しています。
もっと消費者に近いレベルで発電する。消費者のニーズに合う発電と送電を実現する。
そのためには、発電・送電を自由化し、発電方法も発電規模も様々なものを組み合わせていかなくてはいけないでしょう。
今でも発電事業に参入障壁はありませんよ。すでに自由化されています。
その中でも最大級のものは東京ガスと昭和シェルが設立した扇島パワーでしょう。80万キロワットもあります。その他に、いくらでも実例があります。また、実物取引しか認められないため低調ではありますが、電力取引市場もできています。
次世代エネルギーは何も否定されているわけではなく、むしろ価格・量・品質・信頼性いずれの面でも競争にならないからです。政策としてこれらに「ゲタ」をはかせることは可能ですが、そのコストは結局のところ税金などの形で国民が負担することになります。
浸水したエリアをバイオ燃料の培養地にする!
と言って資金調達できる会社はないのですかね.
すると,赤字国債も,増税も抑えつつ,燃料を確保できるような.
税収も見込めるし.資源確保もできるし.
復興構想会議によると復興に要する期間は10年とか.
産学連携で,いつでも開始できるところまで来てるのではないですか?
http://wiredvision.jp/blog/yamaji/201102/201102251301.html