財政破綻は他人事ではない ~ゆうちょ銀行/メガバンク国債保有残高一覧(2011年3月時点)~

井上 悦義

「財政破綻が来る、いや、その前に金融危機が発生する。」と言われても実感がわかない方が多いだろう。財政危機を訴える人はいつもオオカミ少年で、国民の間に危機感はいつまで経っても共有されない。しかし、あなたが汗水垂らしてこつこつ積み立てた預金が紙切れになると実感出来たら、危機感は共有されるのであろうか。2011年3月末時点のゆうちょ銀行とメガバンク(三菱UFJFG、みずほFG、三井住友FG)の国債保有残高などをまとめてみた。


早速、数値を見ていこう。
ゆうちょ/メガバンク_国債保有残高一覧(1)_2011年3月末時点
ゆうちょ/メガバンク_国債保有残高一覧(2)_2011年3月末時点

各銀行の国債保有残高は、ゆうちょ銀行146.5兆円、三菱UFJFG44.9兆円、みずほFG30.5兆円、三井住友FG25.9兆円といずれも巨額だ。ゆうちょ銀行は預金残高174.7兆円のうち、84%が国債に成り代わっている。メガバンク3行も預金のうち、30%~40%程度が国債に成り代わっている。

金利が上昇して、国債価格が下落すれば、当然金融機関は損失が発生する。実際に決算毎に損失計上をする必要があるかどうかは、国債の保有区分にもよるため(満期保有目的債券であれば原則取得原価による評価)、「国債価格の下落=即座に損失表面化」とはならないが、損失が表面化しようがしまいが、資産が裏側で劣化するのは同じことだ。

また国債の償還(満期)までの期間が長ければ長いほど、同じ1%の金利上昇でも国債価格の下落幅は大きい。よって、各銀行が保有する国債の償還予定額の内訳も見た方が良い。それが以下だ。

ゆうちょ/三菱UFJFG国債償還予定額内訳_2011年3月時点
みずほFG/三井住友FG国債償還予定額内訳_2011年3月時点

近年、メガバンクはリスク回避のため、国債の平均残存期間の短期化を進めているが、もう限界に近いはずだ。よって、国債の保有残高そのものを減らすしか、さらなるリスク回避策はないはずだが、運用難のせいか、国債保有残高は増える一方だ。

以下が、各銀行の国債保有残高の推移となる。国債の絶対額だけではなく、総資産、純資産などとの比率を見ることも非常に重要だ。

ゆうちょ銀行(郵貯) 国債保有残高 推移グラフ(1)_201103
ゆうちょ銀行(郵貯) 国債保有残高 推移グラフ(2)_201103
三菱UFJFG 国債保有残高 推移グラフ(1)_201103
三菱UFJFG国債保有残高 推移グラフ(2)_201103
みずほFG 国債保有残高 推移グラフ(1)_201103
みずほFG国債保有残高 推移グラフ(2)_201103
三井住友FG国債保有残高 推移グラフ(1)_201103
三井住友FG 国債保有残高 推移グラフ(2)_201103

ゆうちょ銀行は純資産の1600%(16倍)超もの国債を保有しているため、国債価格が6%強下落すれば、債務超過に陥る可能性がある。実際に損失計上する必要性があるかどうかは上述の通り、国債の保有区分にもよるが、メガバンクと比較して国債の平均残存期間の短期化が遅れていること、また時価評価が必要な「その他有価証券」の区分で国債を40兆円近く保有していることもあり、金利が数%上昇すれば、経営危機が取り沙汰されるだろう。なお、ゆうちょ銀行は既に国債の保有残高を減らし始めているため、ゆうちょマネーは新規国債の受け皿とはなり得ない。

ご覧のとおり、ゆうちょ銀行、メガバンクとも、いずれも国債の保有残高が多い。預金の多くが国債に成り代わっているのだ。日本の財政が信用を失い、国債の価格が暴落すれば、あなたの預金もその価値を失う。あれもこれも嫌だと我がままばかりを言っている場合ではない。

いい加減に目を覚ませ、日本人。

※備考:2006年3月の純資産は「株主資本=純資産」としている。また、上記グラフは、各銀行の財務諸表から数値を拾って作成したものとなる。複数回以上チェックをしたため、作成ミスはないものと信じるが、何かしらのミスがある可能性がゼロではない。その点はご容赦願いたい。