東京ガス田の復活とメタンハイドレートの可採化にむけた提案 - 山田 高明

アゴラ編集部

日本経済の沈滞ムードを吹き飛ばすには大胆な策が必要だ。

国内のガス田としていつも注目されているのが中国と争いになっている東シナ海のガス田だが、われわれはそれ以上に己の足元に目を向けてみるべきである。

東京の真下には巨大な「南関東ガス田」が眠っている。関東天然瓦斯開発㈱によると可採埋蔵量が3685億㎥だ。日本のLNG輸入量が約7200万トン=約1千億㎥なので、これは年間輸入量の3・7年分に相当する。一方、東京ガスの年間販売量が約140億㎥なので、地元消費を基準にした場合、可採年数は約26年となる。


実は半世紀前まで、東京のあちこちでガスの掘削が行われていた。水溶性ガスなので地下水を汲み上げる形で採取する。だが、地盤沈下を引き起こしたため禁止された。
これだけの地下資源を眠らせておく手はない。使い切ってしまうべきだ。

汲み上げた地下水をそのまま捨てていたら地盤沈下を起こすのは当たり前であり、要は圧力をかけてその水を再び地下へと戻せばすむ話だ。

国と都は大胆な規制緩和を行い、その条件さえクリアすれば、都心部であっても民間に開発許可を与えるべきだ。江東区などはとくに有望であることが分っている。あるいは、都と東京ガスが共同で開発する手もある。

現在、東京ガスの一般家庭向けの単位料金は1㎥あたり約145円だ。「東京ガス田」復活の暁には、これを100円以下にすべきである。今後電気代は値上がりするだろうから、せめてガスの方を安くしないとバランスがとれない。

自前の地下資源だからこそ、景気が悪化した時にはガスを安く提供し、よい時には通常価格に戻すといった調整弁としても活用できる。今、国内の景気が悪化している。素早い対策のためには、トップダウンの決断が必要だ。都知事に近い人は、以上の提案をぜひとも耳打ちしてほしい。

さて、日本にとってさらに大きな切り札となりうるのがメタンハイドレート(氷状メタン)だ。低温高圧下でしか存在できないので永久凍土と深海域にしかない。官民学のメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアムは、日本近海、とくに南海トラフに大量の存在を確認している。国内需要の百年分を超えるという。ただし、現在の掘削技術ではペイにはほど遠く、今のところ可採埋蔵量には入っていない。

コンソーシアムは十余年に及ぶ探査で、詳細な分布図を作成済みだ。海底の砂と泥が交互に重なる砂泥互層の、この砂層にメタンハイドレートが入りこみ、濃集帯を形成しているという。コンソーシアムはカナダの永久凍土層で行った陸上試験で、世界初の採取に成功した。この際、生産には加熱法よりも減圧法が有効との結果が出ているが、砂が噛んでポンプを停止させてしまっている。

大資源はすぐそこにある。今や「いかに安いコストで採取するか」という掘削技術を確立する段階だ。だが、それは固体で、海底の表層に広く浅く分布している。しかも、砂泥混じりだ。パイプを突き刺せば圧力で自噴する従来のガス田とは異質だ。よって、従来とはまったく異なった発想と採取法が必要である。

そこで私が提案するのが「真空掃除機法」だ。ノズル部の形状は掃除機とほぼ同じ長方形だ。ただし、縦横何十mもある特大サイズである。洋上プラットホーム上の真空ポンプを起動させ、これで海底の砂泥ごと吸い込んでいく。まさに正真正銘の「巨大真空掃除機」である。

ただし、場所によっては深海一千m下にも及ぶので、パイプの一定距離ごとにブースターポンプを設置する必要がある。これには砂ごと吸い込めるダイアフラム真空ポンプが適切だ。便所の詰まりを直す「ラバーカップ」と同じ原理だ。

一方、氷状メタンは洋上で気化するので、その膨張力で発電し、真空ポンプ等の電力とする。ガスはホースで一気に陸上に送る。気体輸送である。プラットホームの位置はGPSで厳密に測定し、氷状メタンが取れなくなったら、また少し移動する…これを繰り返す。

このように、分布形態が従来と異なるのだから、採取法も異なって当然である。可採化の暁には、日本が手にした史上もっとも安価な化石エネルギーになるかもしれない。それをパイプライングリッドで日本各地に行き渡らせ、日本企業の新たな原動力とするのだ。将来的には韓国や中国への輸出も視野に入れてよい。少子高齢化時代には、資源輸出国的なメシの食い方も一考だ。

この「東京ガス田」の復活と、メタンハイドレートの可採化で、3・11以来、沈滞する日本の空気を吹き飛ばしてもらいたいものである。
(山田高明 フリーライター)