低線量被ばくの人体への影響は、公的なデータが広島・長崎しかないことからよく分からないことが多いです。うわさ話以外にも下記の番組などで首都圏でも鼻血や倦怠感など体調の異変を訴える例もあり、自覚症状以外にも個人の価値観・考え方・家族構成・仕事の立ち位置などによって、見方が二分されていることは確かです。
放射能で広がる異変~子どもたちに何が起きているか
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1180
筆者は以前に外部被ばく・内部被ばくの試算をしましたが、通常一般人が浴びる上限の1年1ミリか、原子力事故の後に設定される20ミリのどちらを支持するかによって、全く見方が左右されます。
■外部被ばくの年間計算値
1)単純計算(都内で多い値:1時間あたり0.15マイクロシーベルトを単純計算)
0.15×24×365=1.31ミリシーベルト2)屋内補正係数を盛り込んだ杉並区発表値
区内保育園:地上1センチ0.17マイクロシーベルトの年間推計
(0.17×8時間(屋外)+0.17×0.4(屋内補正係数)×16時間×365日=0.89ミリシーベルト)
※原子力安全委員会(1980年)「原子力施設等の防災対策」による3)東京大学の積算値
東京大学環境放射線情報で、本郷で測定した数値を合算
3月39.01+4月59.62+5月50.46+6月43.27+7月44.99 =計5ヶ月で0.23ミリシーベルト■食品による内部被ばく量:暫定基準で摂取した場合の上限値
暫定基準:ヨウ素131→300ベクレル(Bq/L)・ セシウム137→200ベクレル
飲料水・牛乳・乳製品 200Bq/kg
野菜類・魚介類・穀物 500Bq/kg
※飲み水/牛乳/乳製品は1日に2リットル2キロ/食べ物は1日1800カロリー:重量1.6キロと仮定飲料:0.013×200×2キロ=5.2マイクロシーベルト/日 年1.898ミリシーベルト
食品:0.013×500×1.6キロ=10.4マイクロシーベルト/日 年3.796ミリシーベルト
※大人が経口摂取した場合の実効線量係数:0.013合計:Cs137のみ 年5.69ミリシーベルト
あくまで個人的な試算ですので、この内容が高いか低いかはお任せします。
ただし現状に見られるように、
1)「年間20ミリでも安全だが1ミリを目指す」とする政府方針。
2)生産地に配慮し、スーパーなどによっては「◎◎県産」が「国産」と表示される。
3)どこの自治体でも頭を抱える、清掃工場から焼却して残る放射性物質入りの灰の処理が決まらない。
のままでは、事故の収束と合わせていつまでも不安が払拭されないのも無理もありません。
こうした情報の判断材料となるメディアにおいても、新聞テレビの情報とインターネットや雑誌の情報と大きく差がある状況のままでは、社会の気風を悪くすることは確かです。昨日はインターネット動画で、同時刻に震災報道に関する同じテーマで2つの番組がありました。「IT復興円卓会議 ~第ニ回メディア~」・「自由すぎる報道座談会6」はどちらも人気があるため音声を聞いていましたが、震災報道の見方に関しても、
・不確かな情報は報道しない教育を受けているし、政府発表が錯綜しているあの状況の中ではよく報道したほうだ。政府マスコミの中でもローテーションが多く専門家ができないことから、長期的な育成が欠かせない。
・発表報道や記者クラブ制度の限界と、フリーランスや海外メディアの活躍。
に関して取り上げていました。それぞれ一理ありますが、前者は確度は高いもののエスタブリッシュメントに忠誠を示す印象は否めませんし、後者はエンターテイメントとして面白いですが、不確かな要素も多いことは確かですので、複数の情報ソースから自分で判断していくことや、どのような経緯で情報が出てくるかを知っておく必要があります。
筆者は狂牛病・口蹄疫・鳥インフルエンザなど一切気にしませんでしたが、こと放射能に関しては過去に線量計で測定した経験があることから、比較的慎重な立場をとっています。
逆に「アゴラ」での論調では、比較的緩和すべしといった内容が多いですが、妊婦や乳幼児など安全確保が欠かせない場合や心理的に強い不安を持っている場合を除いて、市場メカニズムを使ったほうが良いと考えます。
震災後、節約しているものは1位に電気代・2位に外食を減らしている、といった動きが広まっています。例えばすでに取り組みが始まっているものとして、
1)安全性を重視する飲食店では、使っている牛の個体識別情報をオープンにし、品質や飼養場所を公開する例が出ています。
2)一部のチェーン店では、肉などの輸入先や産地などを表示する例も見られるようになりました。
3)逆に食品メーカーによって、相次ぐ消費者からの問合せの中で原産地などを社外秘にするところもあります。
チェルノブイリ後にヨーロッパで起こりましたように、本来は食品のベクレル数を測定・表示して、自分は高齢なので関係ない・気にしないという方は購入する、心配なのでやめる、といった選択肢が広まることが望ましいですし、最終的にそうした流れになると思われますが、こうした時代で考え方は人それぞれですので、選択の幅を設けることは欠かせないでしょう。
石川 貴善(アゴラ執筆メンバー)
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