池田氏の簡潔で示唆に富むエントリーで、興味深いデータが示されている。
そこでの就業率の変動が小さいことが、より厳密に言えば、GDPの変動に対する相関が小さいことを池田氏は、労働市場の硬直性と解釈し、それが日本経済の停滞の原因だと主張している。
しかし、これは別の解釈も可能ではないか。
GDP変動への相関が小さいというのは、ひとつはトレンド効果で、就業率が景気以外の社会的要因により決まっていることが考えられる。それはいい面と悪い面があり、共働きが増加した場合に、社会的に託児所などの整備が進んだこと、職場の性差別が減少したこと(少なくとも就業において。昇進は別問題)などにより女性が職を持つ割合が高まったことがあるとすると、それはマクロ経済の生産性とは別の議論だ。
あるいは景気後退局面で就業率が上がったとすると(これはこのトレンド効果に加え、パートナーの収入が不安定化したために、共働きに変化した場合も含まれる)、相関は低下する。
さらに重要なのは、景気後退局面で、就業率が落ちないというのは失業が増えないということも表しており、それは社会の安定性維持、社会からのドロップアウトを防ぐと言う意味では社会的に良いことだと思われる。
むしろ問題は、第一に、就業率の変化ではなく、若年失業率、あるいは若年無職者の増加であり、これは日本は先進国の中では比較的ましだと思われる。そして第二に、そして池田氏が意図していることは、就業率の中身の問題で、構造変化が起きずに、優秀な労働者が同じ会社に縛られ、新しい産業、企業へ移動しないこと、同時に、生産性が低下した衰退産業における労働者が既得権益を守り、新しい雇用との入れ替えが起きないことである。
これは就業率というマクロのデータでは分析できない。
このマクロデータを元に、構造的な分析を進めるべきではないか。私は、その中で、若年就業率を丁寧に分析する必要があると思う。すなわち、年齢層だけでなく、地域別、各個人の経歴別の分析を進めるべきであると考える。
どのような若年労働者が能力も意欲もあるのに就業の機会がないのか、若年労働者は学校教育への教育投資を中心に、労働市場とのニーズに対してどのような投資を行うべきか、などを明らかにするべきだと思う。