量的緩和

小幡 績

誰もわかっていない。誤解だらけだ。

少し整理してみよう。


そもそも量的緩和とは何だったか。

2001年3月に、非常に評判の悪かった速見総裁当時に導入されたものである。この時の経緯はなかなか興味深い。

1999年2月にゼロ金利という異例の金利水準になったのち、2000年8月にメディアや市場関係者、政治の強い反対を意に介さず、ゼロ金利を解除したことから、日銀批判が高まり、むしろ、結果的に大幅な緩和を余儀なくされた。再びゼロ金利に戻しただけでなく、複数回にわたって公定歩合を下げ、ロンバード型貸し出しの導入、補完貸付制度とあらゆることをやり、それでも足りずに、ついに、2001年3月に量的緩和が導入された。

その時の日本銀行の公式の発表分をそのまま引用してみる。

(1)金融市場調節の操作目標の変更
金融市場調節に当たり、主たる操作目標を、これまでの無担保コールレート(オーバーナイト物)から、日本銀行当座預金残高に変更する。この結果、無担保コールレート(オーバーナイト物)の変動は、日本銀行による潤沢な資金供給と補完貸付制度による金利上限のもとで、市場に委ねられることになる。
(2)実施期間の目処として消費者物価を採用
新しい金融市場調節方式は、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、継続することとする。
(3)日本銀行当座預金残高の増額と市場金利の一段の低下
当面、日本銀行当座預金残高を、5兆円程度に増額する(最近の残高4兆円強から1兆円程度積み増し<別添>)。この結果、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、これまでの誘導目標である0.15%からさらに大きく低下し、通常はゼロ%近辺で推移するものと予想される。
(4)長期国債の買い入れ増額
日本銀行当座預金を円滑に供給するうえで必要と判断される場合には、現在、月4千億円ペースで行っている長期国債の買い入れを増額する。ただし、日本銀行が保有する長期国債の残高(支配玉<現先売買を調整した実質保有分>ベース)は、銀行券発行残高を上限とする。
4.上記措置は、日本銀行として、物価が継続的に下落することを防止し、持続的な経済成長のための基盤を整備する観点から、断固たる決意をもって実施に踏み切るものである。
5.今回の措置が持つ金融緩和効果が十分に発揮され、そのことを通じて日本経済の持続的な成長軌道への復帰が実現されるためには、不良債権問題の解決を始め、金融システム面や経済・産業面での構造改革の進展が不可欠の条件である。もとより、構造改革は痛みの伴うプロセスであるが、そうした痛みを乗り越えて改革を進めない限り、生産性の向上と持続的な経済成長の確保は期し難い。日本銀行としては、構造改革に向けた国民の明確な意思と政府の強力なリーダーシップの下で、各方面における抜本的な取り組みが速やかに進展することを強く期待している。

そして、正確な理解が得られないと思ったのか、自らポイント解説もしている。それも引用しよう。

(参考1)今回の金融緩和措置のポイント
2001年3月19日
日本銀行

新しい金融市場調節方式
 ・市場メカニズムに配慮しつつゼロ金利政策の有する金融緩和効果を実現
 ・過度の金利変動はロンバート型貸出制度により抑制

強力な時間軸効果
 ・消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続 
 ・デフレ予想の是正に貢献
 ・イールドカーブ全体の低下

調節手段の強化と明確な歯止めの設定
 ・円滑な資金供給のために必要な場合には長期国債オペを増額
 ・銀行券発行残高を上限とし金融政策の信認を確保

別エントリーでこれらを要約し、現在の量的緩和への流れを解説したい。