エネルギー問題の冷静な議論を阻んでいるのは、朝日新聞を先頭とするメディアの流す放射能デマだ。きのうの朝刊でも、「米、海へ原子炉投棄を画策 72年、日本に協力要請」という記事が1面トップで出ていた。「画策」というのは悪事を計画することを意味するが、原子炉の海洋投棄は悪事なのだろうか。
この記事も(紙面では)書いているように、核廃棄物を海洋投棄することは1993年のロンドン条約改正までは認められていた。今でも、日本がロンドン条約を脱退すれば海洋投棄は可能である。大前研一氏も指摘するように、コンクリートで固めて日本海溝の1万mの海底に沈めることが技術的にはもっとも合理的な解決策だが、政治的にできない。
核廃棄物の恐怖をあおるメディアが多いが、アリソンによれば、1GWの発電によって出る廃棄物は、石炭火力の32万トン(砒素400トンや有害な重金属)に対して、原子力は27トン(ガラス固化すれば5トン)と1/10000以下である。しかも火力発電の有害物質は大気中に放出されるが、原発の放射性物質は炉内にとどまる。福島事故のように大気中に出ると大騒ぎになるが、石炭火力からはその何百倍もの有害物質(放射性物質を含む)が出ているのだ。
海上に捨てるのなら問題だが、コンクリートに詰めて1万mの海底に捨てることによる環境リスクも景観への影響もない。それが禁止されたのは、各国の環境団体による原理主義的な反対運動が原因であり、それを後押ししているのが朝日新聞のような左翼メディアだ。
またモンゴルに投棄する案も日米で計画されているが、これにも環境団体などが反対している。その結果、核廃棄物は捨て場がなくなり、福島第一のように原子炉建屋の中に貯蔵される危険な状態になっている。小さなリスク(というより一部の反対運動)を恐れて最終処理しないため、かえって大きなリスクを作り出しているのである。