教科書のデジタル化を進める際に考えなければならない論点がいくつかある。11月16日に『三つの論点』と題してシンポジウムを開催するが、その内容を紹介しよう。
デジタル教科書をネットワークに接続して利用しようとしても、著作権制度が阻む恐れがある。先人の知恵と知識を後進に伝え文化を発展させるために行われるのが教育なのに、知恵と知識の伝達を著作権が阻むのは適切なのだろうか。それとも、クリエイティブコモンズライセンスを付与して、教育コンテンツを自由に流通させるべきなのだろうか。シンポジウムでは、クリエイティブコモンズジャパンの林千晶さんに、この問題を掘り下げていただく。
デジタル教科書用のデバイスは、全国統一で一機種が利用されるのだろうか。それとも、各社が提供するデバイス間で競争が起きるのだろうか。国語や算数といった教科書コンテンツは1社だけから供給されるのか、それとも教育委員会での採択を目指して競争が起きるのだろうか。デバイスとコンテンツがともに競争下で提供される場合には、インタフェース標準はどのように定めれば適切なのだろうか。この論点について、松原聡東洋大学教授にお話しいただく。
デジタル教科書は学校と家庭で利用されるが、ブロードバンドに接続されていない家庭での学習はどのように保障したらよいのだろうか。子供が小学校に入学したからといって、貧困世帯に月5000円の通信料負担を求めるのは無理だ。条件不利地域にも同様のアクセス問題がある。補助金で賄うとしても、原資はどうするのだろうか。この論点について、僕が提起する。
シンポジウムでは、その後、パネル討論を実施する。三名に加えて、デジタル教科書教材協議会の中村伊知哉副会長と、鈴木寛前文部科学副大臣に意見をいただくことになっている。
まだ余席があるので、興味のある方は情報通信政策フォーラムのサイトで申し込んでほしい。
山田肇 - 東洋大学経済学部