いまだに、大阪ダブル選挙が「独裁vs.反独裁」という選択だったという認識の人がいることには驚かされます。独裁かどうかは主観的な判断に過ぎません。アンチ維新の人のブログで「大阪維新vs.既成政党」の構図とマスコミが間違って報じたとブログで批判されている人がいますが、自民党から共産党までが信じられない大連合で平松市長を推したことは事実であり、報道が間違っていたわけではありません。実際は「独裁vs.反独裁」よりも、「税金を使う人たちvs.税金を支払う人たち」の考え方の違いのほうが大きかったのではないかと思えます。
大阪ダブル選挙の結果について(財界政党・新自由主義政治家が反対しない「大阪都構想」)(上脇博之) –
それよりも選挙期間中にも、自らの主張と反すれば、ファシズムと攻撃し、さらに事実を曲げた批判を繰り返し、選挙妨害とも思えるアンチ橋下キャンペーンを展開したアンフェアなアンチ橋下キャンペーンを行った人々の主張が嫌われたのはしかたないことです。
そもそも、維新の会の構想を見るかぎり、大阪府と大阪市の二重行政を解消し効率化させることにとどまらず、地方主権を進め、地方の裁量を強化することで、官僚の支配を低下させ、また官僚と地方の二重行政を解消することを目指したものという構図は、権力の分散化ですから、権力の集中化を行う「独裁」という言葉はなじみません。
また極めて民主的なワイマール憲法のもとで独裁者ヒットラーが生まれたことを指摘していた人もいましたが、当時と決定的に異なるのは情報化の広がりや深さが異なることです。マーケティングや広告を学んだ人のなかには、ナチスが伸びた大きな要因として、ポスター、ナチスの制服など、次々と新しい情宣活動を生み出したゲッペルツの才能があったことをご存知の人も多いと思います。
さて、その維新の会と「みんなの党」の急接近が面白い状況となっています。前回の参院選で議席は伸ばしたものの、もうひとつ存在感がなく、手詰まりなのか、与党批判がエスカレートしていた「みんなの党」の幹事長にあたる党パートナーの江田憲司さんです。
: 江田憲司さん、批判より構想力で勝負してほしい :
その「みんなの党」が、今度は議員立法で「大阪都」の踏み絵を各党に踏ませようと主張されていますが、なにか違和感があります。「維新の会」とみんな党が共闘するのは結構だとしても、両者は異質な存在だと感じるのです。そのヒントが、こちらのブログで書かれていることにあるように感じます。
まず「地域主権」だが、みんなの党の地域主権と維新の会の大阪都構想は全く性質が異なる。維新の会はまず都構想があり、その実現のため手段に用いようとしている。一方、みんなの党は霞ヶ関解体が目的であり、地域主権自体が目的化している。
確かに、前回の参院選で「みんなの党」が飛躍したことから維新の会が、「みんなの党」との連携を求めた経緯もあったようですが、このダブル選挙の維新の会の勝利で、その関係が大きく変わり、今度は「みんなの党」が維新の会の勢いに乗ろうという動きとなっています。渡辺代表も江田憲司さんも、このダブル選挙への維新の会への協力と、維新の会との連携をアピールしていますが、地元で「みんなの党」が応援していたことはあまり話題になっていません。それがプラスになったとも思えません。
維新の会と「みんなの党」のなにが違うのでしょう。維新の会のアピールは、大阪の人たちにとっては「我が事」と感じさせたのですが、「みんなの党」は「地域主権型道州制」や「公務員改革」をアジェンダとしているとしても、やはり国会の枠内での党としての差別化でしかないと感じさせ、それでどう変わるのかが一般の我々には聞こえてこないのです。また与党批判のトーンを上げることが差別化だと誤解しているのか、焦点が定まらず、地方主権政党としてのイメージはあまり感じません。
「みんなの党」はアジェンダを繰り返すのではなく、また国民のなかにある反官僚意識に乗るだけでなく、それがいかに人々の暮らしや地方の産業を変え、日本が元気になるのかの絵姿を示さなければなりません。道州制は目的ではなく、手段なのですから、それで何が変わり、国民ひとりひとりにどのような価値をもたらすのかです。
辛口批判は、民主党や自民党に失望している人の票を集めることには役立つかもしれませんが、それでは国民の心をとらえることはできません。
さまざまな問題が多様化してきた時代のなかで、国会や内閣、また官僚の一元的、また一律的な統治ではダイナミックな対応ができなくなり、そのために閉塞感が生まれてきています。そういった状況をブレークするためには、アジェンダを掲げるだけでなく、行動、また誰にむかって語るのか、なにを語るのかについても新鮮味のある切り口が求められます。政治も自らも変革する構想力がなければ、国のカタチを変えるパワーにはなりません。
逆さピラミッドというマーケティングの発想があります。スカンジナビアン航空の改革の思想として有名な話です。お客さんがもっとも上位にいて、お客さんと接する人たちが、その下におり、取締役会やトップはそれを支えるもっとも下にいるという考え方です。地方主権化を唱えるのなら、それぐらいの発想の転換があってもよさそうです。国会という取締役会で、権力をめぐって争い、口角泡を飛ばした批判を行なっても、それは国民にとっては「我が事」として実感できないのです。
いよいよ民主党も行き詰まりまじめ、また自民党への信頼や期待もなく、政界再編への期待が国民のなかに高まってきていますが、その時代を切り開くためにも、まずは「みんなの党」は発想の転換を行い、ぜひ維新の会との連携のなかで、自らの進化もはかってもらいたいものです。そろそろ上から目線をやめませんか。
政治にもイノベーションが求められている – :