ひさしぶりにアゴラで地球温暖化の議論が盛り上がってきました。火付け役は辻元氏。温暖化の議論を活性化するというのが記事の目的だそうです。ちょっと残念なのは、温暖化を防止する対策方法やその負担額も記事中で示して頂ければ、タイトルに沿った記事内容となり、より建設的な議論へリードできたのではないかと思われます。
これに対して古川賢太郎氏は、超長期の気温変化を見れば人間の存在に関係なく気温は上下しているので、「防ぐ」というより「対応する」べき課題なのではないかと疑問を呈しています。
温暖化の議論をする前に、古川氏が述べている超長期の気温変化を見てみましょう。まずは過去5億年の気候の変化を示すグラフをご覧ください。このグラフのちょうど左はじのあたりで地球に生命が誕生しました。それから現在までに、4回の大きな気温の上下のピークが確認できます。そして直近の1億年から現在まで、地球の温度は緩やかに低下し続けています。1億年前といえば白亜紀の中頃で、現代より温暖な気候と高海水準が特徴です。つまり地球は超長期の視点でみると、気温は温度は下降トレンドにあるというのが科学的な認識と考えて問題ないかと思われます。(*1)
ところで過去1億年、気温は一貫して低下し続けているのでしょうか。もちろんそんな事はありません。白亜紀から新生代に入り、300万年ほど前から北半球で氷床が発達して規模が拡大し、現在まで続く氷河期始まりました。こちらの図のように、前半は約4万年周期で、後半は約10万年周期で氷河期と間氷期を繰り返しています。つまり1億年前からの長期の気温下降トレンドがあり、その中に300万年前から始まった氷河期と間氷期という「短期」の気温上下トレンドが入れ子状に存在しています。
では氷期と間氷期の間に温度の上下振動は無いのかというと、このグラフを御覧ください。1万年前に直近の氷河期が終了してから現在までの間に十数回の上下動を繰り返しています。そのちょうど真中あたりの6000年前には、有名な縄文海進があり、世界的に海水準がいまよりずっと高かったと考えられています。要するに、地球の温度は、数千年単位でも上下動を繰り返しているのです。
さて、それでは地球温暖化の議論へ戻りましょう。ホッケースティック曲線が正しいと仮定した場合でも、温度上昇が確認されているのは数百年という超超短期に過ぎず、この先どうなるのかは誰にもわかりません。また温度上昇のタイミングが偶然に産業革命と重なっただけなのか、文明由来の二酸化炭素(石油・木)やメタンガス(家畜)によるものなのかも不明です。
地球で最も温暖化ガスを持ってるのは地下で、大規模噴火があれば膨大な量の二酸化炭素が大気中へ排出されます。次に大量の温暖化ガスを蓄えているのは海で、海と大気との二酸化炭素のやりとりのバランスが崩れれば、やはり大量の二酸化炭素が長期にわたり大気中へ排出されたままになり、気候が大きな影響を受ける事が考えられます。この視点から考えると、大気中の二酸化炭素増大は結果であって、海のシステムのバランスが変わった事が気候変動の原因とも考えられます。いづれにせよ、地球規模のバランスの変化を、人間の科学技術でどうにかしようなんて、もはやハイパーテクノロジーが登場するSF小説のなかでしか実現不可能です。
まとめます。そもそも地表という居住プラットフォームは、先に述べたような長期の気温低下と、短期の氷期・間氷期の繰り返し、更に超短期・超超短期での気温の上下振動が入れ子になった複雑な環境なので、一万歩譲って超超短期の温暖化を「防止」できたとしても、その先にある短期と長期の気温トレンドに人類文明の技術ごときで逆らう事は不可能です。ならば結論は、古川氏の提案にあるように、いかに「対応」または「適応」するかを考え、それに資源を投入して備えるべきではないでしょうか。
「備え」に対する私の提案は、人類は百年でも二百年でもかけて軌道上に巨大な居住コロニーを建設し、みんなで移住するべきというものです。宇宙へ進出する事で、エネルギー問題の解決も容易になります。(*2)
(*1)蛇足ですが、白亜紀の末期頃である6550年前に大量絶命があり、恐竜を含む地球上の生命の70%が絶滅したと考えられています。
(*2)宇宙空間は太陽光発電にとって非常に有利です。パネルを広げる空間がいくらでもあり、太陽光が大気で減衰しないので単位発電量を高くできる可能性があり、夜の無い場所へ設置すれば年中24時間発電できます。
石水智尚 – Mutteraway
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