「周波数オークションに関する懇談会」は12月19日に報告書(案)を審議し、報告書は12月20日に発表された。同時に、「周波数オークションに関する懇談会報告書(案)に対して寄せられた御意見とそれに対する懇談会の考え方」という文書も公表された。
いつもなら「意見とそれに対する総務省の考え方」が公表されるのだが、今回は懇談会が責任を持って考え方を表明したと表面上は読みとれる。しかし、寄せられた意見についての議論は19日にはなく、事務局(電波部)が作成した「考え方」を追認しただけだ。だからこそ、「3.9世代からオークションを」という国民からの多くの意見は、あっけなく門前払いされた。
パブリックコメントは、行政機関が立案した施策案に誤りはないか、抜けはないかを国民目線でチェックする制度である。それによって行政機関には気付きが与えられ、施策は改善される。傍聴者からの情報によると、電波部は「そもそも恐縮ですが、この懇談会につきましては、4G以降の制度導入を念頭にこれまで議論をしてきたところでございまして」と発言したという。4Gが念頭だったという理由で国民からの「3.9Gから」という意見を検討しないのは、パブリックコメント制度の趣旨をないがしろにするものだ。その責任は座長(三友仁志氏)にある。座長は行政手続法を理解しているのであろうか?
ただ、報告書が3.9G以外ならオークションを認めてよいという姿勢を示したのは、わずかながら進歩なのかもしれない。国民の意見を反映して報告書(案)は修正され、次の記述が盛り込まれた。「また、今後の通信・放送融合の進展等を踏まえ、放送など移動通信システム以外の周波数を排他的に利用するシステムについても、将来的にオークションの対象とすることの可能性を検討することが望ましい。」「なお、制度整備後は、第4世代移動通信システム用以外の周波数を含め、オークションに適した周波数について速やかにオークションを実施することが適当である。」
また19日の懇談会で構成員から強い指摘が出たことを受けて、原案の「おって、700/900MHz 帯を含む割り当て済みの移動通信システムの周波数帯についても、周波数再編などにより新たな周波数の割り当てが可能となる場合にオークション適用可能性を検討することが望ましい。」は、最終的には「おって、700/900MHz 帯や割り当て済みの移動通信システムの周波数帯についても、将来周波数再編などにより新たな周波数の割り当てが可能となる場合にオークション適用可能性を検討することが望ましい。」に修正されている。
ところで、報告書は冒頭で「近年、スマートフォンの普及等によってリッチコンテンツがネットワーク上を流通するようになり、携帯電話市場におけるデータトラヒックはここ1 年で約2.2倍に増加している。」と述べている。だから、早急に周波数を割り当てる必要があるというのだ。
そこで疑問がわくのだが、なぜ事業者はテザリングを提供しているのだろうか。テザリングとは、知っての通り、スマートフォンを介してパソコンをインターネット接続させることだ。パソコンから、あるいはパソコンへのデータも流れるから網はますます混雑する。トラフィックの急増に困っているならテザリングは提供すべきでない。しかし、提供しているのだから混雑は実はそれほどでもないに違いない。
山田肇 - 東洋大学経済学部