2012年の世界・日本経済

小幡 績

2012年は、世界経済は停滞するだろう。欧州危機が一番の要因だが、同時に、多極化がさらに進み、欧州危機の影響で悪いところとそうでもないところの差が広がるようになるだろう。

その中で、日本は経済自体は大きく成長はしないが、意外と好調となるだろう。好調のレベルは、マクロで実質も名目も5%成長するわけではないが、個々の企業は、真にグローバル化するところが増え続け、活力が生まれてくる。企業ごとに、個人個人により、大きな差がついてくるだろう。

もちろん、欧州危機は収束しない。しかし、破綻もしない。IMFが出てくるかどうかは焦点だが、いずれにせよ、欧州全体あるいはIMFの支援を受けて、危機対応がなされるだろう。どの国が財政破綻しても、本質は銀行問題で、銀行が国債投資の損失で資本が毀損し、大幅な貸し出しの引き上げによる実体経済の混乱を防ぐために、資本注入し、資産を売却することになる。それをEFSFやIMFが資本注入、資産買い取りで支援することになるが、それでは危機は終わらない。銀行がレバレッジを落とし、地味な貸し出しを目利きを行って実行するという銀行の原点に戻ったビジネスモデルにより、経済に付加価値をもたらし、自己も利益を上げる構造に変わらない限り、再浮上はない。


しかし、欧州やユーロが崩壊することはない。解決すべき問題は、財政再建、銀行支援という古典的でシンプルな問題であり、駆け引きはあるが、外交だけで生き残ってきた欧州が、このシンプルな問題で崩壊するはずはない。時間をかけて問題を処理してくるだろう。ただし、財政再建も銀行の構造変化も時間がかかる。5年は欧州は停滞が続き、世界経済にも大きな影響を与えるだろう。

その影響を最も大きく受けるのが新興国だ。欧州の銀行の投融資先は、各国の国債と新興国への融資が中心だった。国債価格の下落により資本が毀損し、レバレッジも高かったから、その分新興国への融資を大幅に引き上げなければならなかった。その融資は証券投資の形を取るものが多かったから、引き上げは急速に行われた。その結果、新興国の株式市場も通貨も2011年9月には大きく下落した。この影響は、2012年は新興国実体経済に及ぶだろう。投資額が減少すれば、新興国はやはり実体経済も停滞する。今後は、個別の企業として力がある、価値のある企業だけが新興国においても伸びていくだろう。したがって、国レベルで経済ははかれず、個別企業の問題となり、その国の文化、社会の深さ、広さが明暗を分けるようになるだろう。その意味で、中国は地域格差がさらに拡大し、沿岸部と言うことではなく、内陸部でも活力のある地域と躁でない地域の差が出てくるだろう。

一方、米国は相対的に浮上するだろう。ウォールストリートは駄目でも、シリコンバレーに象徴される新しい技術、サービスに基づく企業が成長するのは、やはり米国経済からとなるだろう。医療、医薬品もそうなるだろう。
日本も、チャンスとなろう。政府は安定し、淡々と運営される中で、大企業、勢いのある企業を中心に、日本市場、日本人にこだわらない経営が広がり、真の意味で多くの企業がグローバル化するだろう。

この結果、為替は、新興国安、米ドル高となり、欧州もよくないが、ユーロはすでに大きく下がっているので、やや低下にとどまり、円も高くならないが、弱くもならないだろう。