日本型雇用の解体を確信!

山口 巌

先程、城氏の「経団連、ようやく公式に「長期雇用のメリットはないです」と認める」,を拝読。日本型雇用の解体を確信した。

来年以降、日本型雇用解体の嵐がまるで津波の如く、国内企業に押し寄せる。民間がここまで血を流しているのに、税収減の中での、公務員のパラダイス状態も厳しく糾弾される展開になる筈である。


経団連の提案骨子とは下記との事である。

(1)仕事・役割に応じて等級を設け、賃金水準の上限と下限を決める
(2)暫定措置を講じながら個々人を再格付けする
(3)仕事・役割が変わらない限り、上限で昇給が止まる――

早い話、業務分掌を明確にし、役職毎の責任の大きさと、達成度合いに応じてこれからは年収を支払いますよ、と言う事だと理解する。

ざっくり、下記の如き「年俸タリフ」が適用と言う事であろうか?

役職                   年俸
==                   ==
本部長(含む事業部長)    1,000~1,500万円
部長                 600~1,000万円
課長                 400~ 600万円
担当                    ~ 400万円

それでは、どういう悲喜劇が予想されるかである。

大手検査器メーカー勤務の、A、B、C氏を実例として参照し、彼らの身に何が起こるか推定してみる。

先ず、A氏(45才)である。地方の国立大学工学部を卒業後入社した。配属先はエンジニアとして商品開発部門を希望したが、旧帝大院卒しか採らない会社方針で営業に配属、実直な仕事振りが評価され、昨年部長に昇進した。年収は1,200万円である。

A氏の場合、制度を厳格に適用するとすれば、3年程度の移行期間を経て、年収を1,000万円に減額する事必要である。しかしながら、既にかなりの時間を事業部長の業務に使っている事や、2年以内に事業部長、或いは抜擢で本部長昇格が濃厚なので、当面現状維持、そして昇格時年棒増の可能性が濃厚である。

A氏の同期、B氏(45才)のケースはA氏と異なり悲惨である。

B氏は、中学からエスカレーターで都内の有名私立大学の経済学部を卒業し、大学の先輩である現在の勤め先の専務の勧めで入社した。本人も将来の幹部候補生と自覚し、回りも同様気を使って接してきた。しかしながら、社内外の学閥、人脈に頼り過ぎ、営業マンとしての基本的な研鑽を疎かにした。

結果、課長には同期トップで進んだものの、実績が伴わず3年後に特命担当の部長代理となり、ラインから外れた。そして、今は同期のA氏が部長に昇格した事もあって、本部長直属の担当部長になっている(年収は1,000万円)。B氏の問題は、現実が理解出来ておらず、未だに同期のA氏を下に見ている事である。

さて、気になるB氏の処遇であるが、当然の事ながら年俸タリフの、役職、担当・年俸上限400万円が適応される。3年をかけ、現状の1,000万円から、800万円、600万円そして400万円と減額していく訳である。

余談となるが、B氏の如き男性の奥さんは専業主婦である事が多い。そして、中身空っぽを補う為に、こういう女性は住む所は、井の頭線以外には考えられないとか、持ち家、高級外車志向が強い。そして、子供は私学に通わせたがる。

B氏も多額の借入金により分不相応なマンションを購入しており、二人の子供も私立の高校と、中学に通わせている。経済破綻は確実であり、家庭の崩壊も大いにあり得る。

最後のC氏(25才)は少しユニークである。3年前に都内の中堅私大を卒業し、入社、経理部に配属され今日に至る。本人は出世する気は全くなく、多分、定年迄置いてくれるであろうこの会社に入れた事を、運が良かったと感謝している。

C氏の年上の奥さんは看護師で、上昇志向が強く最近助産婦の資格も取った。年収も当然C氏よりも各段に多く、結果、掃除、洗濯、買い物、料理と言った家事全般はC氏が担当している。住居も奥さんの勤務先の私立病院のすぐ近くで、全てが奥さん中心に回っている。

C氏の今の年収は380万円程度なので、今後少しづる上がって400万円で横ばいとなる。しかしながら、C氏の家庭に取っては安定して得られる基本収入400万円であり、何の不満もない。

同じ会社に勤務する、A、B、C氏、3名の将来を想像してみたが、最も多いケースはB氏だと思う。

山口巌  ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役