日中間で国債の相互持合いが始まる。

小谷 まなぶ

 先日、野田総理が、中国を訪問した際に、温家宝首相との会談で、『日中間で国債を相互で持ち合う』ことで同意した。


 日本が中国の国債を(100億ドル)7800億円規模で購入するということである。中国はすでに日本の国債を相当額保有しているということであるので、事実上、日本と中国で国債の相互保有をこれから進めていくことになる。
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1226&f=business_1226_207.shtml

 日本政府にとっては、日中間の金融政策において、大きく前進したことになる。また、今回の第一歩は、国債の相互保有だけに留まらず、日本円と中国人民元が直接両替できるようになることも視野にいれて交渉がスタートすると報じられている。
 私自身、中国上海で貿易会社を経営している関係上、非常に関心が高い事項である。今までの流れで言えば、日本の企業が中国と貿易取引を行なう際、ドルベースで取引が行なわれている。理由としては、中国人民元の基軸通貨がアメリカドルであるからである。よって、日本の企業が、中国の企業と取引をする際に、日本円をまずは、アメリカドルに両替し、次に、アメリカドルを人民元に両替して支払する形になる。ここで、問題になるが、中国に進出している日系企業が、3万社以上といわれているが、日本の親会社と中国の子会社が取引する際にも、為替両替の国際ルールに則って行うので、中国の子会社に支払をする際にも、日本円⇒アメリカドル⇒中国人民元 の順で両替し、支払うようになっている。日本の本社と中国の現地法人間の取引に関しても、日本円とアメリカドルとの為替変動が影響することがいえる。日中間で、直接両替が実現できれば、日本円を支払って、中国から商品が買えることになる。また、逆を言えば、中国人の投資家が日本に投資する際にも、中国人民元で直接日本に投資できるようになり、日中間の経済活動が活性化することが予想できるのである。今、日中韓の自由貿易協定について話されているが、この出来事は、大きく前進するエネルギーになったことは言うまでもない。しかし、アメリカの立場としては、今まで、日中間の取引をする際に、アメリカドルが利用されていたことで、基軸通貨としての面子や、海外送金する際に、アメリカ側に支払われていた中継銀行手数料などが、落ちなくなれば、金融業界としての利益が損なうことになる。今回の出来事は、アメリカにとって、事実上、日中間取引から、アメリカドルは、手を引いて欲しいという話し合いである。アメリカにとっては、『ドルがなければ日中間取引が出来ない』というルールが変わってしまえば、年間何十兆円という日中間貿易で支払われる資金に対して影響を与えることができなくなる。

■小谷まなぶの中国ビジネス奮闘記 (オフィシャルブログ)