ある現象が頻繁に発生して一種の傾向性が生まれた時、その現象に名前がつきます。例えば“野外で独特の派手な衣装でディスコサウンドにあわせて「ステップダンス」を踊る”現象が頻繁に発生した結果、参加者に「竹の子族」という名前がつきました。なぜ名前がついたかというと、傾向性が生まれてその現象の認知が上昇した結果、名前をつけておいた方が便利になるからです。
「竹の子族」の発祥をひも解くと
1.野外で独特の派手な衣装でディスコサウンドにあわせて「ステップダンス」を踊りたい人たちが出現し
2.世間が「竹の子族」という名前をつけた
になります。しかし、認知がマスレベルで上昇すると1.の発祥をすっ飛ばして「ただ単に流行ってるから竹の子族になりたい人(ミーハー)」が大量に出現します。これがいわゆるブームというものだと思います。
そして、巷で話題に出る「クラウド」もブームになっていると思うのです。この単語を竹の子族と同様に発祥をひも解くと
1.ムーアの法則等、コンピュータの進化によってインターネット上に蓄積出来るデータ量が飛躍的に増えた上に、1人あたりが所有するデバイス量も増えたため、インターネット上に個人や企業のデータをストレージするサービスが出現した
2.という傾向を「クラウド」と呼ぶ
になるかと思います。つまり今「クラウド」サービスを提供しているAmazonやgoogleといった企業は1.の状況に適合したサービスを提供したところ、“結果としてそのサービスにクラウドという名前がついた”のかと思うのです。
しかし「竹の子族」と同様に、認知が上昇するとミーハーが出現してブームとなります。ミーハーの方々は「流行ってるからクラウドやりたい人」ということになるのです。しかも偉い役職の人に割とありがちですが、ミーハーな人は部下に対して「まず、クラウドって何があるか調べようよ」と言ったりします。クラウドはある種の傾向性に名前をつけただけなので、それを分析するという行為自体が不自然な気がするのですが、意外と「企業あるある」のような気がします。(現に、分析したところでgoogledocsだってクラウドな訳で、そういうクラウド図鑑を作ったところで特に意味はなかったりします。)
そして、これは今に始まったわけではなく懐かしの「Web2.0」も同様です。こうしてミーハーの人々が「Web2.0やろうよ」とか「クラウドをやろうよ」と的外れなことを言っている間に、1.を経てクラウドにたどり着いた企業は、既に違う1.のサイクル(認知は向上していないため現時点については名前のついていない傾向性)に入っていると思うんですね。
あと、ミーハーの人々は「クラウド(昔だったらWeb2.0)って儲かるの?」という発言も合わせて行いがちです。それはただの「傾向」であって「ビジネススキーム」ではないので、的外れな気がします。“インターネット上に蓄積出来るデータ量が飛躍的に増えた”という環境を利用していかに優れたビジネススキームを構築するか、というのが本筋かと思います。
こうして一度ブームという名の俎上に上がってしまうと、言葉の裏側にある本質がぼやけてしまいます。ちなみに「クラウド」の後継語として同様に使われがちな気がするのが「キュレーション」と「ゲーミフィケーション」です。
私の認識における各言葉の1.(=傾向性)は、
キュレーション=インターネット上の情報爆発が加速しているため、確かな視座を持った個人の視座(パースペクティブ)を経た情報を獲得するという情報フィルタリングの一種
ゲーミフィケーション=の行為に対して、モチベーションを付与するためにゲーム性を加味したもの
になります。
村井愛子 @toriaezutorisan