段階的消費税増税でストックに課税すべき

生島 勘富

門外漢の私が、専門家が多いこちらで書くのは少々気後れするのですが、床屋政談として書かせてください。

消費税増税が、ほぼ避けられない情勢になってきました。それ自体に反対はないのですが、2年で5%というような増税の仕方ではなく、今こそこちらの記事、「消費税の段階的増税を」にあるとおり、段階的な消費税の増税を検討すべきでしょう。


■消費税でストックに課税する

日本の貯蓄率は異常に高く、貯蓄を効果的に動かすことができれば景気回復は難しくない。それを消費税増税で行おうというのが、段階的な消費税増税です。

当たり前の話ですが消費税はフローに課税されます。しかし、増税のタイミングでは国内で現金を使う限りにおいて、ストック(貯蓄)に課税されたのと同じ意味になるため、「ストックに課税される前(値上がりする前)に使ってしまおう」という心理が働き、駆け込み需要が起きます。

では、毎年1%ずつ消費税が上がるとなればどうなるでしょう。

現在、10年定期でも1%の金利はないのですから、金利が今のままであれば複利計算しても10年後の消費税増税分の10%を超える利息にはなり得ません。消費税は逆進性が高いとされますが、10年前後の長期間に亘り毎年税率が上がれば、その期間はストック(貯蓄)に課税されているのと同じことになります。

消費税の税率が10%で済むと考えている人は少ないと思います。実際問題として10%では足りないでしょうから、上限は「プライマリーバランスが取れるまで」とすれば良い。いつ消費税増税が終わるか分からないからこそ「早く使わないと損」と考える人も増えます。

もし、景気回復すれば増税が止まるのは早くなりますし、消費税が景気の悪化の原因とは言えないということを証明できます。そうなれば、その後も、もう少し冷静な増税、減税の議論ができるようになるでしょう。

■2年で5%は耐えられない

2年で5%というような急な税率変更であれば、1%ずつ増税するよりも、急な駆け込み需要が起き、急な落ち込みが発生します。長い目で見れば元に戻りますが、不況の中、この急な需要と、その後の落ち込みに耐えられる体力がある会社は少ない。

2年で5%も消費税率が上昇しても、年金問題など抜本的解決策が見えない状況では、消費マインドは確実に下がりますから、私も今の状態での増税には反対です。

しかし、毎年1%上がるという増税方法なら、現預金を多く持つ富裕層ほど消費マインドが刺激されることになり、タンス預金を引き出すことにもなるのでは。

■今こそやるべき

国会戦略としては、今の増税案の2年で5%と比べ、2年で2%というマイルドな増税で済みます。5%になるまでに5年も掛かり、その間に何度か国政選挙が挟まりますので「なんでも反対する層」にとっても「今年は阻止できなかったけれど、来年は阻止するぞ!」という形にもなり、暫定的に国会を通すのも、今の案よりもやりやすいでしょう。

これらは、井堀利宏氏や池田信夫氏が、2009年頃に提唱されていた内容です。しかし、残念なことに当時の世論として消費税増税に賛成する人は今ほどは多くなかったためか、大きな議論にはならなかったようです。

しかし、私は未だにベストに近い案と考えていて、諦めきれない。

消費税増税に賛成する世論が過半数前後になった今こそ、もう一度、考えてみるべきではないでしょうか。

株式会社ジーワンシステム
代表取締役 生島 勘富
(Twitter @kantomi)