ダイソンという英国企業をご存じでしょうか。彼らはサイクロン式の掃除機を世界で初めて開発したメーカーです。創業者であるジェームズ・ダイソンは、従来型の紙パック式掃除機の欠点を改良し、紙パックが不要な方式としてデュアルサイクロン方式を開発しました。ダイソンは最近では羽根のない扇風機なども販売しています。
ダイソンの商品は掃除機にせよ、扇風機にせよ、どこにでもあるコモディティ(日用品)です。そんなモノを作っていて中国やインドの低価格商品に勝てるのか?と、普通の人なら思うでしょうが、ダイソンはありふれた商品を独自の工夫によって改良(モディファイ)し、高価格商品として世界中に流通させることに成功しています。
コモディティを創意工夫をもってブランドにまで押し上げる手法は、Appleのそれに通じるものがあると僕は思います。彼らにこそ、スタートアップの起業家は学ぶべきではないでしょうか。
ダイソンにしてもAppleにしても、世界を変える商品を作ってはいますが、それはゼロから生み出した全く新しいものというよりは、既に存在する凡庸な商品をブラッシュアップすることによって生み出したものです。つまり、ビジネスチャンスは日常の中に潜んでおり、注意深く根気づよく取り組むべき課題や参入すべき市場を見つける努力を惜しまないことこそが、起業の要諦だといえるのです。ということは、誰にでも起業家になれる可能性があるということです。
スティーブ・ジョブズを遠くからみていると、まるで魔法使いのように感じたものです。ところがそうではない。同じマジックでも手品と魔法は違うのです。手品にはタネも仕掛けも存在します。しかし、タネ明かしをされたとしても、素人にすぐに手品師の真似はできません。手品師は一生懸命手品のタネや仕掛けを考えると、それを使って今度はさらに必死に練習するのです。地道な練習なしに、よい手品師になることはできないのです。
優れた企業や人物のことを評論する人は多いですが、ちゃんと練習する人は少ない。実践者として成功したいのなら、練習するしかないのです。
小川浩 – @ogawakazuhiro