900MHz帯で比較審査が始まったが

山田 肇

900MHz帯の免許申請結果が、電波監理審議会に2012年2月10日に報告され、総務省から公表された公表資料はわずか5ページで、それだけで外部がシミュレーションするのはむずかしいはずだが、申請4社のうちソフトバンクモバイルが優勢と報道されている。危惧を抱いたイーアクセス(イーモバイル)は、より透明性の高い比較審査を行うようにと、2月14日に総務大臣に対して要望書を提出した。

美人投票に例えられる形で、比較審査は主観的と批判されてきた。イーアクセスが「競願時審査項目の判断基準及び配点または優先順位」と、その元となった「競願時審査の対象となる申請内容」を公開・開示することで、客観的な審査を行ってほしい要望しているのは正しいことだ。


公開・開示しなければならないのは、競願時の審査対象だけではない。電波部が最低限満たすべき絶対審査基準と位置付けた各項目についても、判断基準及び配点または優先順位を公開するのが適当である。先般の公表資料には記載がないが、元々の指針(審査基準)には「財務的基礎」といった項目もあった。電波監理審議会は、モバイルマルチメディア放送の免許はドコモ子会社(mmbi)に与えるのが適当と、2010年9月8日に判断した。その際の決定要因の一つは「財務的基礎」だった。当時の記事には次のようにある。

財務的基礎については、配布された資料によると「増資についてより確実な根拠に基づいた調達を計画している」「単年度黒字の達成時期が3年目とMJPに比べて2年早い」「開設計画の最終年度における累損が9億円であり、MJPの210億円と比べて大きな差がある」などからmmbiの方が優位と判断したと説明されている。

ソフトバンク優勢との報道は、絶対的審査基準では差はなく、共願時審査基準とりわけ電波のひっ迫状況でソフトバンクが一歩抜け出している、というのが根拠になっている。しかし、先般の公表資料にあるとおり、ソフトバンクとイーアクセスが予定する設備投資額には、8207億円と1442億円と5倍以上の開きがある。この差が財務的基礎の評価でどう影響したかについて、電波部はきちんと公表すべきである。

付け加えるなら、財務的基礎の評価方法はモバイルマルチメディア放送の際と同一であるべきだ。美人投票の場合、審査員の美醜の判断基準が大きく揺らぐはずはない。電波免許の比較審査で、その都度に判断基準が揺れるようなら、比較審査は美人投票にも例えられないくらい恣意的なものということになる。

山田 肇 -東洋大学経済学部-