1月18日のブログで世の中、価格の下がる資源がある、というトピを書きました。それは天然ガスで2008年ごろは13ドル台だったものの直近では2ドルちょっとというところまで下がっていました。
理由はアメリカで積極攻勢に出ている非在来型の天然ガスといわれるシェールガスの開発が進み、供給が増えていることにあります。資源の価格は需要と供給で決まりますが、このシェールガスの埋蔵量は莫大であり、かつ地球のあちらこちらに点在することから天然ガスの価格は弱含んでいました。また、今年の北米が暖冬であったことで需要が低めだったということもあります。
しかし、アジア諸国を中心とした液化天然ガス(LNG)の高い需要もあり、この天然ガス相場もいよいよ底打ちし、反転する気配を見せ始めています。
そんな中、中国はカナダで資源への高い投資を続けてきました。自国への安定供給、そして、シェールガスについては技術獲得のためです。中国には世界で最大のシェールガス埋蔵量があるとされ、中国にとってその技術取得は中国のエネルギー政策に大きな影響を与えます。
ペトロチャイナはカナダ ブリティッシュコロンビア州でのシェルとシェールガスの開発を進め、液化天然ガスの輸出基地開発の資金まで出しています。
今般、三菱商事は同じBC州でのシェールガス開発を行うためにエンカナ社に60億ドルの投資を決めました。これはペトロチャイナに比べ出資額が6倍にも及ぶ巨額なものであり、将来的にはLNGの生産設備も作る、としていますので日本の拡大する需要に対して素晴らしいものになるでしょう。
もともと、不思議だったのは日本企業はカナダが資源国家でありながらもあまりカナダへの投資を積極的には進めてきませんでした。しかしながら石油価格の高騰と共にカナダのオイルサンドを効率的に採取する技術などを売り込み、資源を含め、さまざまな形での投資がこの数年で一気に加速してきています。
実際、シェールガスについても中国がシェルと手をむすんだ際、日本勢はカナダに興味がないのか、という地元の新聞記事にかかれたことあるぐらい戦略が遅行していました。
一方でLNGに関しては原発問題から派生して、電力安定供給のためのLNGの確保が国家戦略的意味合いを持つことになりました。BC州は日本から見れば最も近い北米の一州であり、カナダの政治的安定性、BC州と日本の経済的結びつきを考えればもっと政治的に積極攻勢をかけておくべきだったと思います。今般、三菱商事さんが巨額の投資を決めたことはBC州のクラーク州首相の春に予定されている日本訪問に格別の意味が出てくるでしょう。
ところでLNGの価格は16ドルから17ドルをうかがう感じかと思います。今後、天然ガス相場は冒頭の通り、底打ちから相場反転の兆しがあるため、LNGの価格も上昇する趨勢になってくるかと思います。日本としては早期に安定資源確保を行うべきかと思います。
世界はまだ、ヨーロッパ問題で揺れていますが、私の見立てでは世界レベルの景気は回復に向かう基調にあり、資源価格は再び高騰する可能性は秘めていると思います。日本としては先手必勝で望んでいただきたいところです。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年2月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。