枝野経産相の「原発再稼働必要」発言を歓迎する

山口 巌

読売新聞が伝える所では、枝野経産相がここに来て漸く「原発再稼働必要性」に就いて言及したとの事である。

遅きに失した感はあるが、勿論今回の発言を歓迎する。

枝野経済産業相は24日、BS朝日の番組収録で、停止が相次ぐ原子力発電所について、「今の電力需給状況では稼働させていただく必要がある」と述べた。安全性の確認と地元の理解が前提だが、枝野経産相が再稼働の必要性に言及したのは初めてだ。「(原発の)再稼働がなければ(今年夏は)相当な節電が必要になる」と述べた。火力発電燃料の負担増で電気料金も「5%とか10%とか15%とかいうレベルで上がる」と指摘し、国民生活や経済活動への悪影響を避けるには、再稼働が避けられないとの認識を示したといえる。

理由は単純明快である。

そもそも、原発は停止させるべきでは無かったからである

ボタンの掛け違いの第一歩は、昨年5月9日の中部電力による浜岡原発の全炉停止である。

国民が頭を冷やし理解せねばならない事実は、電力会社は何も好き勝手に自分達の都合で「発電計画」を立案している訳ではなく、「電力需要予測」に基づいているという基本的な話である。

そして、「発電計画」の前提は最適発電所の稼働である。

こういう背景を一切無視して原発を停止させれば、当然の事ながら今我々が直面している様な竹箆返しを受ける事となる。

自社発電量の5割超を原発に頼ってきた関西電力の様な所は事態は重篤である

関西電力の2012年3月期連結決算は、純損益が2900億円前後の赤字に陥る見通しとなった。赤字決算としては過去最悪となる。停止した原発の代替で、石油や液化天然ガス(LNG)など火力発電所の燃料費がかさむため。27日にも通期の業績見通しを発表する。

更に、奇妙な事に日本のマスコミは関心が無い様であるが、今月になってニューヨークの原油先物相場(WTI)が上昇している。チャート見る限りこの先どこまで上がるのか判らない。

一方、ここに来て「円安」が進行している

原油輸入に限って言えば、日本は「原油高」と「円安」の往復ビンタを受ける事になるが、これは相当の激痛である。

原油から天然ガスに切り替えれば良いではないか?と指摘される方も散見されるが、天然ガスの価格は基本原油価格にリンクしており同じ事である。

中・長期的には、節電とか電力の自由化とか施策はあると思う。

しかしながら、短期に限定すれば原発を再稼働させ、原油と天然ガスの輸入削減に努めるのが最良の策であると思う。

日本の貿易赤字が深刻化しており、一方製造業が疲弊し今後の輸出に余り期待が持てない以上、本来不要な化石燃料の輸入等止めるべきと思うからである。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役