ソニーの失敗は経営の失敗

山田 肇

「イノベーションのジレンマ」というしばしば引用される書籍がある。クレイトン・クリステンセンの執筆で、翔永社から翻訳が刊行されている。増補改訂版は2001年に出版されたが、帯には次のように書かれている。

変革の時代、過去の成功体験こそが企業自己変革の足枷となる。この困難を克服するためのヒントがここにある。 ソニー会長兼CEO 出井伸之

イノベーションのジレンマ帯 出井


出井氏は「イノベーションのジレンマ」を自社にあてはめようとは考えなかったに違いない。この時期、ソニーはCDからの複写を制限するCCCDに躍起になっていた。音楽データをネット上で共有するNapsterなどのP2P技術に対抗するためだ。一方、AppleがiPodを発売したのも2001年。つまり、CDという過去の成功体験が足枷になって、Appleのような音楽配信ビジネスにソニーは乗り遅れたのである。

だからソニーの失敗は経営の失敗なのである。

山田肇 -東洋大学経済学部-