マイナンバーは一里塚

山田 肇

情報通信政策フォーラム電子行政研究会のセミナーが昨晩開催された。セミナーを通じてマイナンバーへのニーズが二つ明確に示された。第一は災害対応である。災害時には免許証一つで逃げて来る住民もいるはずだ。そんなとき速やかに行政サービスを提供するには、個々人ごとの行政情報が連携できる仕組みが必要である。行政情報連携が自治体の範囲に留まっては、東日本大震災のような広域災害には対応できないことも明らかだ。

第二は高齢社会への対応である。高齢者に効率よく効果的に医療と福祉のサービスを提供するには医療介護情報の連携が必要であると、多くの登壇者が指摘した。マイナンバーは、これらのニーズに応えるものでなければならない。


個人情報保護一本槍ではいけない、という点でも意見が一致した。個人情報の中にも機微なものもあれば、利活用することで価値が生まれるものもある。災害時のように、個人情報の保護よりも何よりも、個人の保護を優先しなければならないときもある。個人情報は重要だが種類や状況に応じた保護が必要なのである。

行政が持つ個人情報の提供記録等が確認できるマイポータルが開設されることになっている。公式マイポータルからデータが民間に提供されるようになれば、もっと利用しやすい形に加工するビジネスが誕生するだろう。スマートフォンのアプリとして提供されてもよい。

わが国の電子行政は世界各国から一周、二周遅れとかねてより指摘されてきた。しかし、今、ニーズは明らかだ。マイナンバー法案は本格的な電子行政に進むためにどうしても通らなければならない一里塚なのである。

山田肇 -東洋大学経済学部-