サラリーマンの喜びを阻害する厚労省 新社会人よ、初任給でレバ刺しを食べなさい

常見 陽平

4月です。マスメディアでも、ネットでも「新社会人」関連のニュースや、フレッシャーズに向けた熱いメッセージをよく見かけます。

新社会人が「社会人になった」と実感する瞬間は初任給をもらった時であり、それで焼肉など食べた瞬間です。その焼肉文化が阻害されようとしているのです。サラリーマンと焼肉、レバ刺しというテーマで考えてみたいと思います。


もうすぐ新社会人に「初任給」が支給されます。私も今から15年前の4月下旬に、会社のフロアで事業部長から給与明細を渡されたことを覚えています。まだ振り込まれる前なのに、パーッと行きたくなり、同期と一緒に焼肉屋に行きました。高くて不味い店だったのですが、「社会人になったんだなあ・・・」と実感したのでした。そう、当時は牛角なども店舗が広がっておらず、焼肉は学生時代はめったに食べられないものだったのです。社会人になったなと感じたのは、自分のお金で焼肉や回らないお寿司を食べるようになったこと、そしてタクシーに乗る機会が増えたことです。

焼肉に関して言うと、普通のカルビやタン塩ではなく、上カルビ、上タン塩を食べるようになったこと、さらにはユッケやレバ刺しなどを食べるようになったのも社会人になってからです。特にレバ刺しは、あの透明感あふれる艶のあるルックス、口に入れたときの食感、官能的な舌触りがたまりません。あっという間に胃袋めがけて超特急はやて号です。人はレバ刺し好きで生まれるのではありません。レバ刺し好きになるのです。

このように、焼肉は、そして中でもレバ刺しは月給取りになったことを実感する通過儀礼なのです。

そのレバ刺しですが、ご存知の通り、2012年6月にも法で禁止されることになる模様です。元々、90年代にもO-157の関係から生食用のレバーの加工基準が策定され、見直しがかかっています。

昨年、焼肉屋チェーンでユッケで食中毒になり死者が出たことが影響しています。そもそも、その焼肉チェーンの管理はずさんもいいところだったわけで、これを基準にジャッジするのもいかがなものかと言いたくなります。

たしかに、牛のレバーには食中毒リスクがありますが、これだけを槍玉にあげるのはどうなのでしょうか?逆の見方から言うならば、危険があると断定するなら、そんなものをずっと放置してきたのもズサンであると言わざるを得ません。食の安全ということを言うのなら、私たちの普段食べているものがすべて安全だと言えるのでしょうか。

日経は4月4日付の社説にて大批判を行いました。また、J-CASTニュースでは、規制することによってかえって裏メニュー化するリスクを伝えています。焼肉屋で出したものを生で食べられるリスクもあります。

なぜ、こうなったのでしょうか。それは、池田信夫先生風に言うならば厚生労働省がバカだからです。この事例は、新入社員にとって「官」とは何かを考えるよい事例だとも言えます。短絡的な規制で場当たり的に対応する、何でもルールで縛ろうとする。これが日本の「官」なのです。いや、役人も一人ひとりは優秀で良い人なのですけど、組織になるとおかしくなるものなのです。

素人の発想ではありますが、ふぐ料理のように免許制にして残すのはどうでしょうかね。

レバ刺しはすでに昨年から厚労省から自粛が呼びかけられており、現在は提供している店舗も減っています。ただ、まだ食べられる店はあります。冒頭で書いたように初任給で行く店といえば焼肉屋なのですが2012年新卒は初任給でレバ刺しを食べた最後の世代になる可能性があります。私も禁止になるまで、焼肉文化を後世に伝えるべく、提供している店を探し出し、できるだけレバ刺しを食べるようにしたいと思います。

「新社会人よ、レバ刺しを食べなさい」と言いたいのですが、「食中毒になったらどうするんだ!」と激怒する方もいることでしょう。あくまで案として、そんなメニューがあることをご提案しておきます。

そうそう新社会人の皆さん、初任給をもらったらもちろん、保護者への感謝を忘れずに。私はテディベアを母親に買いました。今も実家に飾ってあります。

お金のありがたみを噛み締めましょう。私もお金のありがたみを体感するべく、レバ刺しを噛みしめたいと思います。