イースターの金曜日、アメリカの3月度雇用統計が発表され、当初予想のプラス20万人増からわずか12万人の増に留まり、悲観的なニュースが多く出ております。
まず、このニュース、悲観かどうかといえば私なら「欲張りすぎ」であって「程よい調整」だと見ています。
12月から3ヶ月連続で雇用者が20万人増を記録し、アメリカ景気の回復が本格的かどうか占うとも言われたわけである程度のショックはわかりますが、今のアメリカに月々20万人純増をずっと続けていけるだけの急速な経済回復状況があるとは思えません。
アメリカの議会はねじれの上に大統領選挙を控え政治的なサポートはほとんどできない状況下にあります。よってここまで回復してきたのは時間的自律回復と金融のジャブジャブ状態で体裁を取り繕っていると言ったほうがよいと見るべきです。ならば回復は本来であればゆっくりと階段を上るべきであり、過去三ヶ月の回復は息切れするペースだと見るのが正しいはずです。
よって「たった12万人増」とか「前月から半減」という数字だけ追ったタイトルは本質を見落としやすくなると思います。
もうひとつは市場の傲慢さ。3月にバーナンキ議長が追加的金融緩和に言及しなかったことで株式市場は調整を続けていますが、ステートメントからQE3の言葉が抜けたということは経済が回復に向かっているので「お薬の量」は増やしませんといっているのです。それに対して市場は「もっと薬を」と望んでいました。そして薬をくれないから市場はショックで株価が下がるという本末転倒の金融相場独特の状況を呈しているのです。
今回の予想を下回る雇用統計は当然ながら「やっぱり熱が出たから薬を」という理由にはなると思います。もちろんバーナンキ議長がその処方箋を書くかどうか、これはそう簡単ではないでしょう。理由は以前にも述べましたがイラン問題がこれから出てくる可能性があるからです。
ただし、最新のニュースを見る限りオバマ大統領がイランのホメニイ師に核の平和的利用なら核所有を容認するとするメッセージがあったようです。これはこの先の動きを読み取るのに非常に重要な意味合いがあります。つまり、オバマのアメリカはイラクを攻撃したくないという強烈なメッセージであり、原油価格の沈静化を図り、ひいてはアメリカ国内のガソリン価格の下落を図る政策と見えます。まさに大統領選挙対策とも取れます。
ならば更に深読みすればバーナンキ議長に状況次第でQE3の余地を与えることにも繋がります。
週明けの市場の予想は大方1%の程度の下落予想となっていますが、このところの長い調整も含めて考えればいわゆるあく抜け期待もありえる気がします。ただ、世界の経済地図は今、スペインに目が向いています。放置できないほどの状況にも見受けれられます。今後の動きに要注目というところでしょうか?
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年4月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。