ソーシャルゲームのガチャ規制問題に関して、賭博業界側からの意見。まず、よくある
1. 転売によってそれを現金化する手法が存在する。
2. それで儲けているor損している人が実際に居る。
という2点を根拠とした「ガチャは実質賭博であり、違法である」という論法に関して。
賭博業の専門家の視点からすれば、これを刑法の規定する賭博罪として罰することは不可能だと考えます。パチンコの景品買取問題と類似した論議となるのですが、自らの保持する財物や権利を第三者に譲渡する事自体は憲法において基本的人権として認められた財産権の行使です。
ソーシャルゲームの運営側がそれらを直接買取るケースは別として、ガチャによって取得した権利を完全なる第三者に譲渡すること自体を違法行為として罰することは非常に難しい。現在ソーシャルゲームの運営側が行っているように、「RMT(現金を使った売買)の禁止」を定めた利用規約違反であるとして、ローカルルール内でプレイヤーに対してペナルティを課す程度が関の山でしょう(ただし、それはイタチごっこにしかなず、本質的な解決策にはならないですが…)。
それでは、ソーシャルゲームにおける今後のガチャ論議はどこに向ってゆくかといえば、 山本一郎氏がリンク先の投稿で述べている以下の一文となるでしょうか。
そもそも店舗営業をしていなくても遊興や風俗の類の娯楽の提供を業としていれば風営法の枠内で考えていくべきであって、ゲームセンターや雀荘が規制されているのにケータイで娯楽を提供するソーシャルゲーム業界が規制の枠外というのはそもそもおかしいという話です。
現在、我が国の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」は、ゲームを提供して業をなすゲームセンターという業態を以下のように規定し、その規制の対象としています。
スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗
現行の風適法の規定は、あくまで店舗営業を対象としているものであり、オンラインでの営業行為に関しては規制の範疇としていません。よって、現行法規によってソーシャルゲームを規制することはこれまた無理なわけですが、「風俗環境の適正化」というこの法の目的を前提として考えた場合、その営業が店舗ベースで行われているorオンラインベースで行われている事に大差はないという主張は非常に真っ当なものであるといえます。事実、このような論法が風適法の運用そのものに影響を与えたのが平成10年の法改正です。
風適法は、先に挙げたゲームセンターなどとは別の業態として、性風俗特殊営業と呼ばれるいわゆる「性風俗店」の規制も行っています。平成10年の改正以前の風適法は、これら店舗型性風俗特殊営業の5号営業種としてアダルトグッズなどを販売するアダルトショップを規定していましたが、一方でインターネットの普及で爆発的に増えた無店舗型の同種営業は規制対象としてはいませんでした。ところが、その法律に改正が加えられたのが平成10年。当時の改正は、これまでの店舗運営を前提とした性風俗営業と並列する形で「無店舗型性風俗特殊営業」という新たな営業種を規制対象として加え、その2号営業種としてオンラインを含む無店舗でアダルトグッズを販売する営業を規定しました。その論拠となったのが、まさに「法の目的を前提として考えた場合、その営業が店舗ベースで行われているorオンラインベースで行われている事に大差はない」という主張だったのです。
そういった過去の事例を前提としながら、我々はソーシャルゲームをどのように規制すべきかorするべきでないか、というのがこれから我々が行わなければならない議論です。前出の通り、風適法は風俗営業8号営業種として「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの」としてゲームセンターを規定しているワケで、それが無店舗で行われた場合はどう対処すべきなのか。過去に店舗型アダルトショップ営業への規制をオンライン営業にまでも延長したのと同様に、ゲームセンター等への規制をオンライン上で展開されるソーシャルゲーム(もしくはオンラインゲーム)にまで延長すべきなのでしょうか。
当面の論点としては、1)ソーシャルゲームが風適法の定める「本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの」にあたるかどうか、2)風適法の法の目的から考えて、それが無店舗で提供された場合も規制の範疇とすべきかどうか、の2点に絞られるものと考えます。上記2点での論議を経て「規制対象とすべき」という答えが出た場合には、風適法の「無店舗型風俗営業種」としてオンラインゲームorソーシャルゲームが規定されるかもしれません。
木曽 崇
国際カジノ研究所 所長