BBCが、早速昨日のソニーとシャープの赤字決算の修正を伝えている。内容的には、朝日新聞の報じる、、ソニー赤字過去最大の5200億円 見通しの2.4倍と、シャープ赤字拡大3800億円 パネル在庫の評価損計上とほぼ同様であり、特筆すべき物はない。
しかしながら、読後、何とも言えない後味の悪さが残ったのも事実である。
ソニーとシャープの体たらくが、凋落する日本の「アイコン」に思えてしまうからであろう。
Sony’s performance has been dragged down by its television business which has lost money for eight years.
SONYの経営は8年間赤字続きのテレビ事業に足を引っ張られて来た。
彼らの常識では、8年もの長きに渡り、赤字事業を放置するとは「経営」は何をやっているのだ?もっと露骨に言えば経営不在では?と言うものであろう。厳しい問いかけである。
“The interesting question is: What number of TVs do they expect to sell in the future?” said Pelham Smithers, who runs his own consultancy that specialises in electronics firms.
“Selling around 20 million units a year is too small to be price competitive and too big to be a niche player,” he told BBC News.
電子機器メーカーを顧客とするコンサルタント、Pelham Smithers氏の「それでは、SONYは将来一体どれだけのテレビ受信機を販売する積りなのか?」と言う質問が興味深い。
年間2千万台程度の販売では、価格競争力を維持するには少な過ぎ、ニッチプレイヤーとして活動するには大き過ぎる。
「帯に短し、襷に流し」と言う諺があるが、ソニーに限らず日本の家電メーカーは随分と中途半端な状況にあり、結果赤字の垂れ流しを余儀なくされていると思う。
企業本体が赤字となれば、優良事業に育つ事が判っていても研究開発に資金を投入出来ない。結果、薄利事業が不採算事業に転落し、優良事業が薄利事業化するのを指を咥えて傍観するしかない。必然的に、ソニーの連結決算推移が示す通り、毎年赤字幅を広げて行く事になる。とうとう、今年は過去最大の5,200億円に達したと言う事である。
何もこういう状況はソニーに限った話ではなく、全ての国内家電メーカーに共通している筈である。
判り易く言えば、国内家電メーカーは負のスパイラルに陥っているのである。
問題はどうやって復活を遂げるかである。
戦後、構造不況業種と目される繊維産業に在って、塗炭の苦しみを経験しながらも、今やエクセレントカンパニーとして見事に復活した「東レ」の足跡を検証してはどうだろうか?
飽く迄、東レのホームページを参照しただけであるが、眼につくのは「レッドオーシャン」や「将来のレッドオーシャン化」を巧みに回避し、東レとして「価格決定権」の持てると思われる分野に特化している点である。
「繊維、アパレルの分野」で言えば、同社は国内シェア―ナンバーワンであり、強固なブランド力を持っている。具体的商談でも、これは絶対的な強みとなる。
東レの炭素繊維がボーイング社に対し16年間、独占的に供給されるのは余りに有名な話である。競合他社に対し、参入の機会すら奪ってしまった。ボーイング社の要求に答える為に成された要素研究の成果は、近い将来大きく花開く電気自動車(EV)車体用の材料として大きく飛躍すると推測される。
今後、世界で水不足は深刻化し「海水淡水化設備」の需要は急増する。多くのエンジニアリング会社が入札に参加する事になるが、コア技術となる「逆浸透膜」の部分は、ほぼ全ての応札企業が、実績、技術力から東レを採用する筈である。競合他社に取って参入障壁が極めて高い訳である。
推測するに、これに続く、医療システム、医薬品も濃淡こそあれ同様の状況ではないだろうか?
家電メーカーが見習うべき今一つは、社内コア技術の融合、最適化であると思う。
飽く迄、外から見ているだけであるが、国内家電メーカーの場合、社内コア技術の融合以前に、事業部間の仲が悪く、何時も足の引っ張り合いをやっている様に見えて仕方がない。
国内家電各社の経営状況は、露骨に言ってしまえば棺桶にほぼ両足を突っ込んだ様なものであり、残された時間は少ない。社内で内輪揉めをしている場合ではないと思う。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役