どうなる北朝鮮 失敗のあと --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

私はこのブログでミサイル発射失敗が世界が最も期待している結果ではないか、と書かせていただきましたが、そのとおり、失敗に終わりました。

結果として韓国の株式を始め、アジアの株式は地政学的リスクからの解放で堅調でした。一方、国連安全保障理事会は緊急会合を開き、「発射は遺憾」とのコメントを出し、更にアメリカは食糧支援中止の制裁を課すこととしました。今後、日本を始め各国も経済制裁を決めていくことになるでしょう。


一か八かの賭けをして負けたのですからニュースに出ている以上の影響があると思っています。一部報道では雪辱戦で核実験を行うのでは、とも憶測されておりますが、私はそう簡単なものではないと思っています。

まず、お金。今回の失敗で700億円が吹き飛びました。日本でも700億円の打ち上げ失敗とくればかなり深刻な金銭的ダメージですが、人口2400万人の国で1900万人が一年間食べられる金額といったらどれぐらいのインパクトかお分かりになるかと思います。

次に世界を敵に廻してしまったということです。発射ボタンを押すのは簡単ですが、その結果、成功しようと失敗しようと世界からの援助の手が止まるということです。これは経済価値に直せば更に何百億円もの価値になるでしょう。つまり、北朝鮮の自由にはならないということです。世界の監視の目をそんなに甘く見てはいけません。

作戦的には仮に核兵器実験をするようなそぶりがあれば今度は頭ごなしにその計画を潰す算段が関係国の間で行われるでしょう。そこまで想定するならば私は北朝鮮が築き上げた砦がぼろぼろと崩れ始めるのではないかと思っています。もちろん、一朝一夕には崩壊しませんが、その方向に進みやすくなると見ています。

国民にとって金体制を象徴とするならば象徴としての権威と実績があればこそ、それが成立します。日本の天皇制のように長い歴史があるのと違い、僅か3代目。しかも、この難局で20歳代の経験が十分でない若者が側近からの支援がどれぐらいあるのかも不明瞭である中で国民の支持をとりつけることが出来るのでしょうか?

次に軍部が一枚岩でいられるのか、という疑問。金日成、金正日のように圧倒的カリスマ性があったからこそ世界有数の軍部を引き連れることが出来たのです。それは外交的手腕も含めてであります。しかし、正恩氏にカリスマ性があったとしてもそれが浸透する前に軍部で内部分裂する可能性は大いにあります。これは今回の発射失敗の処理の仕方一つでも内部では統一意見は出にくいはずです。

とするならば意図的に北朝鮮を揺さぶることも可能になってきます。もともと無理がある国の体制ですから壊れるときは案外早く、国民の意思もすぐに変わるのではないでしょうか?例えば日本の戦中と戦後直後。この間の日本人のメンタリティの変わり方は極端でありました。ただ、よく研究すればメンタリティが変わったというより、潜在的に不信感を持っていたもののそう思っても、口に出してもいけないという強迫観念から表に出なかっただけの話で戦争が終わった瞬間、幹部を別にすればかなり手のひらを返したような言動が目に付いたわけです。

私は北朝鮮はしばらくは静かになると思います。長距離ロケットの再挑戦は仮にやるとしても最低でも3年ぐらいはかかるのではないでしょうか?しかもそこには技術と資金があっての話です。

もしも北朝鮮が目立った行動をするとなればそれこそ、それは最後のやけっぱち、ということになるような気がしております。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年4月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。