最近になって、衆議院、参議院ともに国会内で憲法調査会が開かれ、18歳選挙権が本格的に議論され始めている。この背景には、日本国憲法の改正手続きに関する法律の附則3条で、施行日である2010年5月18日までに18歳選挙権を実現するために必要や法整備を行うことになっているにも関わらず、違法状態で放置されていることがある。
これだけ世代間格差の問題が騒がれているにも関わらず、違法状態になっても、当事者である若者の声を聞かないという典型である。
一方で、こうした問題をあざ笑うように、「世代間格差問題」が幅広い方々に知られるきっかけとなった「税と社会保障の一体改革」においても、消費税増税のバーターとして必要になった公務員制度改革で既得権益に踏み込むことができず「新卒56%削減」というまたもや若者だけにしわ寄せがいく形になった。
海外メディアの取材を受ける度に「日本の若者はなぜ暴動を起こさないのか」と言われる。欧米において、同様に若者世代にしわ寄せを強いる政策を行えば、当然のようにデモが起こるからだ。何も起こらないで受け入れているように見える日本の若者が不思議でならないようだ。
しかしながら、日本の若者も決して何も感じていないわけではない。その意味でも、若者の声をどう政策形成に反映するかは、非常に大きな課題と言える。
こうしたことから考えれば、冒頭に挙げた18歳選挙権の問題も早急に対応すべきであり、少なくとも次の参議院選挙には、18歳からの投票を実現することで、若者の参画への改善のきっかけにするべきである。
また、「民主主義の学校」と言われる地方自治現場での直接参画の仕組みやシティズンシップ教育なども含め、民主主義の質を向上させる仕組みの構築も求められる。
3・11以降、国や自治体などでtwitterやfacebookなどソーシャルメディアの利用が急激に増えている。震災ボランティアなど確実に増える若者の社会への関心を活かすためにも、新しい情報共有のあり方や新しい社会参画のあり方が求められる。単にこれまで行われてきた参画の延長だけでなく、オープンソースやソーシャルメディアを用いた集合知の活用や政策マーケティングなど、自治においても「自治2・0」とも言える新しい民主主義の仕組みの構築を考えていくべきである。
世代間格差の問題を議論する際、世代会計をはじめ、社会保障や税の改革などにばかり目が行きがちだが、こうした問題の背景にある政策形成や意思決定のプロセスにおいても考えていく必要がある。
こうした提案も含め、明治大学世代間政策研究所『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)の第2章では、世代間格差の問題の背景にある高齢者の声を過度に反映するシルバーデモクラシーの現状と、それを是正するための若者の参画やユースデモクラシーの構築の必要性について、海外の事例や自治体での問題などを書いた。ぜひこちらも手にとってもらえればと思う。
明治大学世代間問題研究所
高橋亮平(松戸市審議監・前市川市議)