特別コンプライアンス委員会?or第三者委員会?(アコーディアゴルフの乱) --- 山口 利昭

アゴラ編集部

またまた脊髄反射的に取り上げてしまいそうな企業不祥事ネタであります。東証一部のアコーディアゴルフ社におきまして、社長さんの会社資産の私的流用疑惑を(役付を解任された)専務さんが告発したそうであります。アコーディアゴルフ社といえば、高い評価を受けているコーポレートガバナンスで有名のようで(ISSユニバースに組み込まれている企業のうち、上位0.2%に位置しているとのこと)、実際にも取締役10名のうち、3名が社外取締役、監査役に至っては4名すべてが社外監査役(常勤1名、非常勤3名)で構成されています。東洋経済さんの記事では「お家騒動」と報じられておりますが、見方を変えれば企業の自浄能力が機能した事例……ということも言えそうな気もいたします。そもそも社長さんの会社資産私的流用の事実は大株主から監査役に届いたようで、この監査役さんがコンプライアンス委員会に情報提供、専務の方が本格的に調査を開始しようとしたところ、臨時取締役会で解任された、というもの。


ただ、ここからが難しいところですが、会社側は社外取締役3名から構成される「特別コンプライアンス委員会」を設置して、専務を含む社内取締役4名を(接待費流用等で)調査対象とするとリリースしたのでありますが、この告発をした専務さんは、「社内の調査では公正さは担保できない。第三者委員会の設置を臨時取締役会で提案したところ、否決されてしまった」そうであります。また特別コンプライアンス委員会は社長の資産不正流用の件は特に明示して調査対象とはされていない、とのことであります(あくまでも東洋経済さんのニュースに基いています)。

現在、世間では社外取締役制度の義務付けの是非が論じられておりますが、この時期におきまして社外取締役のみで構成される委員会がどのような活躍をみせるのか、今後の論議の行方を占う試金石として重要かと思うのでありますが、いっぽうにおいてコンプライアンス委員会の委員長まで務めておられた専務の方の告発では「社外取締役による調査体制では不十分。第三者委員会による調査が必要」と述べておられるのであり、非常に複雑な状況を呈しております。専務さんのおっしゃるように、社外取締役といえども、公正な調査は期待できない……というのが正しいということであれば、またまた「ほれみろ、社外取締役といったって、しょせんは社長の子飼いではないか」と揶揄(やゆ)されることになりそうです。企業法務で著名な弁護士の方が社外取締役として調査に関与される以上、調査には非常に期待がかかるところではあるのですが……

社長さんの私的流用の内容が、これまた「すさまじい」だけに、おそらく新聞や雑誌ネタになる事件かとは思いますが、いずれにしましても、これだけコーポレートガバナンスがしっかししている(と思われている)上場会社において、今後社内調査(特別コンプライアンス委員会による調査)のみで問題終息に向かうのか、それとも第三者委員会が設立されるような事態になるのか(ちなみに専務は東証にも調査依頼を要請しているとか)、今後の展開に注目したいと思います。とりいそぎ、本日は速報版のみにて失礼いたします。


編集部より:この記事は「ビジネス法務の部屋 since 2005」2012年4月12日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった山口利昭氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はビジネス法務の部屋 since 2005をご覧ください。