日本板硝子という会社の外国人社長、クレイグネイラー氏が途中降板することになりました。理由は「事業戦略の方向性や進め方について、取締役会と自分との間に相違があった」とのこと。ちなみにこの会社は前任の社長も外国人でしたがやはり途中降板、その理由が、「日本の古典的サラリーマンは会社第一で、家族は二の次だが、私にはそれはできなかった」と言ったとされており、この日本板硝子社に外国人に合わない空気があるのかもしれません。
そういえば臨時株主総会で吼えていたオリンパスの元イギリス人社長、マイケルウッドフォード氏も当初、社長返り咲きを目指すとして話題を振りまきましたが最後は「奥さんにもういい加減にして欲しい」と言われてこの一件、幕引きになりました。
どうも日本にイギリス人社長は根付かないような気がします。何故でしょう?
日本で活躍する外国人は多いと思います。企業ではレバノン生まれブラジル育ちのフランス人、カルロスゴーン氏、あるいは元マツダ社長のマークフィールズ氏は出身会社フォードで次期社長の筆頭候補となっています。サッカーの監督、ザッケローニ氏はイタリア人です。いろいろな意見や見方があると思いますが、私は日本人にはアメリカ人かヨーロッパ本土の人、特にフランスとイタリアはウマが合うのだろうと思います。イギリス人はダメかもしれないと思います。
アメリカ人の場合、日本人との相性は良いか、悪いかは別として日本の文化や社会が戦後、あまりにもアメリカナイズされたことでアメリカのやり方を踏襲する癖があります。よって、アメリカ人のやり方には比較的従順になりやすい気がいたします。
ではヨーロッパ本土ですが、多分、国の歴史の重みと憧憬が入り混じっている気がします。日本人は昔からフランス、イタリアの料理、ファッション、観光、人物を好んでいます。日本のパスタやフランス料理が本国よりもうまいかもしれないというのは本国のそれを模倣、つまり、学び取りたいとする熱い気持ちの表れなのです。
ですがなぜか、歴史的に強い結びつきのあるイギリスや性格が似ていると言われるドイツとはそこまでしっくり来ないのです。理由ですが、私はイギリス人もドイツ人もある意味日本人に似ていて「つまらない」のだと思います。イギリス人は偏屈な理論家だし、ドイツ人は頑固一徹ですが双方とも日本人が比較的持ち合わせている気質に似ています。が、イタリア人、フランス人、或いはアメリカ人のその気質は日本人には比較的欠けているのです。
ポジティブな考え方、奇想天外な発想、優美なセンスなど日本人には思いつかないところを攻め、それが成果となって表れます。その結果、この人はすごいという尊敬のまなざしに変わり、前向きの回転が効いてくるのでしょう。
イギリス人と何故ウマが合わないかといえばイギリス人が持ち合わせるヒエラルキーが邪魔していることもあるかも知れません。イギリス人は田舎で普通の家庭育ちの人が大会社の社長になるようなサクセスストーリーはあまりありません。仮に金持ちになれたとしても社会的地位は別問題です。つまり、イギリス人が日本の大会社の社長の器に適しているかどうかといえばしっくりこない相手なのかもしれません。
仕事が出来れば誰でもいい、というわけではなく、その国のもつ文化や歴史を紐解くとたかが人との相性でも面白いものが見えてくるものです。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年4月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。