カナダの経済が上向いていると見られています。カナダ中央銀行の政策会議では金利の見直しはなかったもののカナダが良好な経済指標を示し、結果として2013年まで利上げはないとしていた見通しを繰り上げるのではないかと見られています。
私の手元に来たカナダ大手銀行のチーフエコノミストのレポートよるとこの銀行では利上げはアメリカが2014年まで利上げをしないとしてもカナダは1%程度の利上げ余地があるとしています。なぜ1%かといえばこれ以上金利差があるとカナダドルが米ドルに対して強含んでしまい、原油や工業製品のアメリカへの輸出に影響が出るほかアメリカからカナダへの人の動きが減少し、経済的にインパクトが出てしまうからです。
さて、このチーフエコノミストの大胆予想は2012年9月が0.25%、10月が0.25%2013年春が0.5%の計1.0%の上げを想定しています。また、中銀の発表を受けてこの銀行に限らず、エコノミストの間では年内に利上げがある確率が80%となっています。
この予想に対して私はちょっと強気すぎるのではないか、とやや懐疑的に思っております。理由は分析がカナダ国内経済の現在の動きをベースにしたものであり、目先に迫る大きな変化の可能性を内包していないように思えるのです。
目先に迫る大きな変化の可能性?
カナダにとって目先最大の経済イベントはアメリカ大統領選挙。次に中国の経済です。トレードパートナーとしてこの二つの国の状況でカナダは右にでも左にでも大きく揺れ動きます。
まず、アメリカ大統領選挙。どちらが勝つかという問題ではありません。大統領選挙のために景気浮上策を思いっきり使っているため、選挙後にそれが一旦萎む可能性があるということです。しかもアメリカの景気は3月の雇用統計の発表で期待に届かず、がっくり来ていますが、4月第二週の中間統計でもあまり芳しい数字が出ておらず、景気回復は踊り場と見られます。
アメリカも成熟国ですから日本と同様、バブル崩壊後の景気回復は極めて緩慢なものになると考えるのが現実的だとすれば一定の回復を見たあとは一進一退の状況が続き、消費は低迷、金利は上げられず、という想定は大いにあると思います。そうであるならばグローバル化が進み、アメリカと6400kmもの国境があるカナダだけが景気が好いというのは都合が良すぎるように思えます。
次に中国。カナダの資源は中国の需要で大きく相場が動き、中国サマサマになっています。極端な話、中国で消費や経済が上向いたという発表があると必ずといってよいほどカナダの株式は跳ね上がるようになっています。まさに風が吹けば桶屋が儲かる的な連想です。
この中で最近判断に苦しむのは中国の経済状況は想定されるよりも悪いのではないか、という見方。中国元の変動幅を1%にしたのは中国元の上昇余地ではなく下向きではないかと勘ぐる向きもあるぐらいです。もともと中国のGDPなど定期的な経済統計の発表が日本のそれより早く発表できるのはなぜだろうかといつも言われているのですが、統計のデータが正しいかどうかその信憑性そのものを疑う話が再び出てきているのです。
中国経済が思った以上に調整に時間がかかり、秋のトップ交代までは穏便にスムーズに進めるとすれば秋以降、何が飛び出すかわからないという怖さもそこに秘めています。
大方、2013年の景気はパッとしない、と見る向きが多いのですが、それはとりもなおさず、2012年選挙イヤーで無理を重ねた調整の年と見ているからであります。ならばカナダの景気だけがよくて、金利も今から1%も上がるというのはやや都合がよい、ベストシナリオにオマケのアンコをたっぷりのせたような感じに見えます。
カナダ国内の景気は悪くはないですが、個人負債の多さ、高すぎる不動産価値など不安材料は結構あるのです。利上げのタイミングを探るというのは私にはまだ、早すぎる話のように思います。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年4月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。