昨日、小沢民主党元代表をめぐる、いわゆる「陸山会事件」の一審判決が出ました。訴えた指定弁護士側の控訴期限は5月10日らしいんだが、一度、立件を見送ったものが検察審査会の判断で強制起訴されたわけです。起訴の根拠自体が薄弱なんだから、普通に考えれば控訴はしないし、仮に控訴されても上級審が棄却するのでは、と思います。ただ、今回の裁判には「政治的な臭い」がそうとう漂っているわけで、小沢氏の政治生命を絶つ引き伸ばし戦術をとる可能性はあるかもしれません。
この判決については、小沢氏という人物に対する「期待度」みたいなものによって各ブロガーの意見は大きく違います。
小沢信者と呼ばれる人も多いんだが、この「暗黒夜考~崩壊しつつある日本を考える~」というブログでは、今回の裁判は検察権力が突出して小沢氏を陥れた「魔女狩り」とする記事を引用し、無罪判決に安堵。小沢氏が政権与党の政治に関与できず、対米隷属から脱せない「不幸な事態」を嘆いています。
この「リベラル21」の田畑光永氏の論考では、政治資金規正法違反の部分では国民に謝罪すべき、と書いています。さらに、小沢氏は野田総理の自公連携を妨害するために橋下大阪市長の勢力と結ぶのではないか、と予想。ポピュリズム政治がさらに進む、と危惧している。
こちらの「逝きし世の面影」というブログでは、そもそも偽造報告書という検察の大ミスから始まったので最初から検察側の「負け戦」だった、と断じています。「市民感覚」を醸成したマスメディアの夜盗的ゲリラ攻撃は、小沢氏の「豪腕」に一蹴された、というわけ。それにしても「検察審査会」というシステム自体どうなのか、という話もあります。
アゴラでも北村隆司氏が、起訴理由や検察の失策ばかりあげつらい、本質である小沢氏の資金問題に斬り込まなかった司法は、その役割を放棄した、と書いています。その結果、害を被るのは国民、というわけです。
「ほろ酔い浅慮」というブログは、小沢無罪判決を報じるマスメディアの論調を紹介。どうして小沢氏ばかり叩くのか、と疑問を呈してます。
マスメディアは総じて小沢氏嫌いなようで、ここまで拘泥するのには何かウラがあるのでは、と疑われても仕方ない。それが、クロスオーナーシップ制の見直しなど、小沢氏が唱える「マスメディア改革」への抵抗なんだとしたら堂々と反論すればよろしい。どうも各マスメディアの論調はすっきりしないわけで、痛くもない腹を探られたくないんだったら他の疑惑議員も叩くべきです。
この「ニコブログ」では、判決自体は妥当だったとし、自公が小沢氏の証人喚問をゴネているが、それなら政治資金で虚偽記載して修正申告してきた政治家は全て証人喚問しなければならない、と書いている。もっともな話です。さらに検察審査会の存在や問題点にも言及。この国の司法制度は腐っている、と断じています。
一方、小沢氏に染み込んだダーティなイメージは拭いきれない。しかし、それほどまでに小沢氏を待望する人がいるなら一度、彼に政権をまかせてみればバケの皮が剥がれるていいのでは、と書いています。
とにかく、小沢氏が何をしたいのか、国民にはよくわかりません。2009年マニフェストを否定した民主党内になお在籍し、執行部と対立する中、確かに抽象的な言葉は聞こえてくるんだが具体的にはどうするのか伝わってこない。今回の無罪判決が政治に大きな影響を与えるのは自明なのにもかかわらず、既存マスメディアが嫌いなのか知らないがこれらを通して国民に対してあまりものを言わない。
もちろん、指定弁護士が控訴して高裁が受理すれば、小沢裁判は継続となり、これまで同様の政治的膠着状態が続くわけです。小沢氏自身、控訴期限が過ぎてからと考えているのかもしれませんが、早い時期に記者会見なり、テレビ番組への出演なり、手記を出すなり、虚偽記載を含めた自分自身の考えを表明するべきと思います。いずれにせよ、次期の総理か? などとも囁かれる人物が財政再建や景気浮揚、原発問題などについてどう考えるのか、それが伝わってこないことこそこの国の不幸、と言えます。
アゴラ編集部:石田 雅彦