渡嘉敷島の過疎から考える --- 坂田 航

アゴラ編集部

私は3月12日から15日にかけて、沖縄本島の西部にある慶良間諸島のうちの一つ、渡嘉敷島に行って参りました。那覇市の泊港から高速船に40分ほどで着く、のんびりとした小島です。南北9キロ、東西2.8キロ、周囲25キロ、面積15.8平方キロメートルの南北に細長い島です。

沖縄本島、特に那覇は観光客が多いため、開発がかなり進み、排気ガスが朦々としていて、東京から来た私でも辟易としてしまうほどです。しかし、ここ渡嘉敷島はそんな都会の喧騒から離れた、とても静かな島です。平成19年現在で島民の人口は712人で、平成15年から16年の間に微増したのを除けば島民の流出は止まっていません。


ですから、昼間でもまばらに人を見かけるだけで、夜になるとほとんど人影は消え失せてしまいます。オフシーズンで観光客が少なかったせいもあり、島民がどれだけ少ないのかを体で感じ取ることができました。そして、高齢化が進んでいるのもはっきりと見て取れました。公共事業に従事する島外からの労働者を除けば、40代以下の世代は小中高生を除けばとても少ないのです。

私は渡嘉敷島の出身ではないので、もちろん私を見たことのある人はいるはずもなく、「観光客だな」といった目で見られわけですが(笑)、若い世代が少ないせいで余計目立って見えたことでしょう。

観光客といっても私のように「来るために来た」観光客はおらず、皆ダイビングやきれいな海を求めてやってきているのでした。私はもともと「渡嘉敷島のような都会の喧騒から離れた土地ではどのような生活がなされているのか?」という問題意識を持って東京を発ちました。そういう考えを持ってこの島を見ていると、様々な矛盾に気が付いてきます。

まず挙げられるのが、社会資本の整備が行き届いていること。道路にしろ臨海公園にしろ、使う人はわずかであるにもかかわらず、不自然なほど手入れがなされています。

公共事業ですから、雇用を生み出すためには仕方がない側面もあるのかもしれませんが、何もほとんど使われないであろう橋の新設に投資をしなくてもよいだろうと呆れてしまいます。そんなことをしているよりは、都心から若者を呼び戻すためのコンテンツ作りをすれば良いのにと思ってしまいます。

確かに、お金があればすぐに新たなコンテンツ作りができるというわけではありません。しかし、Social Mediaが発達している現代では、少しのプロモーションで利益を何十倍にも拡大することができる時代になっているのです。

例えば、渡嘉敷島には大きく分けて3か所の綺麗な海岸があります。森を抜けると、サンゴ礁の、青く澄み渡った美しい海が眼前に広がってきます。それは今までに見たこともない美しさで、何とも表現しがたい、見る人にしかわからない素晴らしさがあります。

沖縄周辺海域では海水温の上昇によってサンゴ礁が徐々になくなりつつあるというのに、ここ渡嘉敷島ではまだたくさん残されていています。これを生かして若い世代を呼び込むことは十分に可能だと考えています。例えば、学生たちに映画撮影や合宿所などの場を積極的に提供したり(島内には国立青少年自然の家がありますが、地理上とても不便な場所にあります)、あるいは海洋研究所の設置を奨励して学問研究の中心地としての島を目指したり・・・。

せっかく綺麗な海が残されているのですから、これを利用しない手はないでしょう。確かに島内では交流行事などもありますが、内地の人々が積極的に参加できるような体制には至っておらず、まだまだ不十分であるといえます。

また、渡嘉敷島は毎年冬にザトウクジラがやってくることでも有名です。これも十分観光資源として生かせます。クジラといえばSea Shepherdの話題が多いですが、本来クジラとはどういった動物なのか、知らない人のためにもっともっと積極的に広めていくことができます。なぜならクジラは水族館でもなかなか見ることのできない貴重な動物なのですから。

しかしながら、大きく立ちはだかっている壁は言語です。特に沖縄県自体についてこのことが指摘されており、長期的な利益を追求するならば英語や韓国語、中国語の標識・地図を用意することで、海外から観光客が着やすいような大勢を整えることも望まれます。

また、沖縄県は観光収入に依存していますが、それがいつまでも続くとは限りません。円高が続き、日本人が海外に目を向け始めているからです。さらに国内問題も踏まえると、今後上向きになる可能性は高くはないことが言えます。これを踏まえて、沖縄県全体で島嶼部の支援を行っていく必要があるでしょう。

内地からは「米軍基地反対の勇ましい男」に見える仲井間知事ですが、現地報道を見ていると、決して評価が高いわけではないことが伺えます。せめて島嶼部の人々からの票を集めるためにでも、今一度本島以外の観光資源の再発掘を進めてみてはいかがでしょうか?

<参考資料>
渡嘉敷村 公式サイト 渡嘉敷村の地勢
渡嘉敷村 人口の推移(PDF)

坂田 航
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