情に訴えるのはそろそろ終わりにしよう

松本 孝行

大阪市の橋下市長の改革によって、大阪市の予算が削られるそうです。下記のリンクが「無くなったら困るという声を市長に届けてください」というお願いとともに回って来ました。
こどもセンター職員一同より緊急のお願いです

同時期にフェアトレードについてやまもといちろうさんのブログが話題になりましたが、そろそろ情に訴えかけるようなやり方は止めにしませんか?


最も一般的に見られる情に訴えかける行為で思い出すのは、みなさんも見たことがあると思いますが障害者の方々が自分たちで作ったクッキーやパンなどを販売する行為です。私の地元でもそういった姿をたまに見かけますが、あれはまさに情に訴えかけた販売方法です。「障害を持った人が一生懸命作ったんです、障害を持っていてかわいそうでしょ?それなのに頑張ってるでしょ?だから買ってあげてください」というオーラが伝わってきます。たとえ彼らや支援者にそのつもりがなかったとしても、です。

こどもセンターのブログにしても同じで、「私たち困ってるんです!だから一緒に困るっていう声を届けてください!」と情に訴えかけています。困っている人は助けたいと思ういますが、このブログを読んで本当に大阪市にこの事業が必要か?大阪市の赤字財政の中でも、予算を割くべきなのか?それを判断できる材料が見当たりません。私もできるなら応援してあげたいですが、こうも判断材料がなければ支援するにもできないのです。

フェアトレードにしても同じです。以前、職業訓練の講師をしていた時に生徒の中から「フェアトレードは情に訴えかけているだけで、商品として魅力的で買いたいものがない。だから買ったことがない。実際に買っているのはお金持ちのおばさまが寄付感覚で買っているイメージがある」という声がありました。つまりフェアトレードも購買層の多くは富裕層で、彼らが寄付感覚で「いいことをした」という自尊心を満たすためにあるのではないか?そう生徒の方は感じていたのです。

こういった情に訴えかける方法では、大きな支持を得ることは出来ません。私はアゴラでも私のブログでも、社会起業家について書くことがありますが、彼らを支持しているのは「途上国のために頑張っているから」でも「社会問題に苦しんでいてかわいそうだから」でもありません。彼らのビジネスモデルや商品・サービスが優れているからこそ、支持しているのです。

毎回例に出すことが多いマザーハウスですが、代表の山口さんは「バングラデシュの貧しい人達のためにお願いします!」と情に訴えかけてバッグを販売してはいません。シャネルやプラダに並ぶようなブランド力のある商品をバングラデシュの人々で研究・開発して販売しているのです。そうして本当に価値のあるものを作り、買いたい!持ちたい!と消費者が思えるものを販売しているからこそ、多くの人たちから支持されているのです。決してバングラデシュで作っているから人気なわけではないのです。

ですから、障害者であろうが外国人であろうが若者であろうが老人であろうが、誰が作っても商品が良ければ多くの人が買い求めるのです。「このパン美味しい!」「このクッキーは贈答品にぴったり!」そう消費者が思うように商品開発をし、ブランド力を高めていけば情に訴えかける以上に商品は売れていくでしょう。

子どもセンターも「この施設・サービスは本当に必要なんだ!」というのであれば、それを多くの人に説明できるはずです。どういう理由で存続したほうがいいと思っているのか、無ければどういうデメリットがあるのか、あれば子供たちにどういうメリットがあるのか、丁寧に理論的に説明して納得してもらえれば、支持者は増えていくでしょう。

フェアトレードも同じです。「コーヒー農家の人達はこれだけしか儲けにならない!」とか「これを買えば途上国の支援になりますよ」という情に訴えかけるのではなく、消費者が積極的に買いたい商品を作るようにすべきでしょう。スターバックス以外でもネット販売をして売れるような、消費者が欲しがるブランドコーヒーを作れば、さらに途上国の支援につながるはずです。

情に訴えかける方法は結局のところ、長期的には支持を増やすことができないと私は思っています。