NEXCO東日本は事故の責任を引き受けるべき --- 田代 克

アゴラ編集部

死者7人を出すという痛ましいバス事故が起こり、バスの安全性が問われている。テレビのインタビューなどでは、バスはやめて鉄道にします、という声も多いようだ。


鉄道は安全であると現在では一般に広く思われているが、戦前は自動車以上に危険なものだった。運転士の居眠りや信号の見落としによる衝突事故が多発し、1回の事故死者が100人、200人ということはざらであった。その鉄道が今や安全な乗り物になったのはひとえにATS等の運行制御装置の設置によるものだ。福知山線の事故はATS設置漏れによっておこった事故といえる。

ガードレールは一種の自動車誘導装置であり、1998年には国土交通省の通達によって障害物がある場合にはそれを避けて誘導するように設置することにされ、新規建設の高速道の場合にはその基準に従って作られている。つまり、居眠り運転のバスが障害物にぶつからないようにする技術はすでにあったということである。

事故の主因が居眠り運転であることは疑問の余地はないが、その事故が単なる接触事故で終わったか、7人死亡、重軽傷者多数という重大事故になったかを決定したのは道路の構造にあった。新規建設の高速道に適用される基準が既存道路にも導入されていれば、この事故は単なる接触事故か、せいぜい軽症者を出す程度で終わっていたはずだ。

もちろん、国土交通省の通達では既存道路の適用は求めていなかったので、それが違法であるわけではない。

ここで参考になるのは鉄道の場合と原発の場合だ。鉄道の場合は全ての路線にATSをつけることで「鉄道は安全」ということが常識となるほどに安全を確保できた。原発の場合は自ら作った安全神話を守るため、安全基準を改定しても既存原発には適用されず、その結果古い原発で致命的な事故を起こし、新規建設どころか再稼動すら危ういほど信頼を落としている。

NEXCO東日本(東日本に限らないと思うが)は、これから鉄道になっていくのか、原発になっていくのかが問われている。幸いにも高速道路に安全神話はなく、安全確保を徹底することには問題がない。NEXCO東日本に道路管理者としてのプライドがあるなら、今回の事故を重大化したのは道路管理者である自らの責任によるものと認め、これを発表し、被害者補償をし、他の道路を点検し、問題のあるところは自ら積極的に改善すべきである。それは今の鉄道会社が持っているような安全に対するプライドを高速道路会社が持てるチャンスなのだ。

もちろん、このようにすると今後似たような多くの事故で道路管理者の責任が問われる可能性が高くなる。マスコミ報道は運転手やバス会社追及に向かっているので、わざわざ自らに注目が集まるような対応をしないでおいて、訴訟があったときだけ対応するという手法もあるだろう。おそらくその方がコストはかからない。しかし、会社としては決まったことだけやる保身目的の下請会社のようなものだ。

一方、ここで提案したような責任を引き受けると、当初は訴訟が多発するだろう。しかし、問題点をつぶしていき、訴訟が起こっても勝てるような道路を作りこんでいけば、その知見は全国にも、世界にも拡張できる。NEXCO東日本は今後どういう会社になろうと考えているだろうか。

田代 克