日経新聞の伝える所では、大学500校にハローワーク窓口を新たに設置するとの事である。
結論を言ってしまえば、こんな事をやっても何の意味も無いし、寧ろ後で重篤な後遺症に悩む事になると思う。
先ず第一に、雇用が無い所、或いは今迄あった雇用すら失われつつある状況でハローワークを大量に増設しても何の意味も無い。商品そのものが枯渇している北朝鮮で、国民が窮乏しているからと言ってスーパーマーケットをあちこちに増設する様なものである。
「雇用対策」とは「雇用の新たな創造」であり、その駆動部分となるものは「産業対策」である。
現在の状況がどうで、今後どうなるかに就いては辻先生のアゴラ記事、本質的な問題を避けるなが極めて明瞭に説明してくれている。或いは、百聞は一見にしかず、下記のチャートが全てを示している。
個人的には、昨日のアゴラ記事、とち狂った電力行政をどうやって正常化させるか? で説明した通り、現状の出鱈目な電力政策では国内の製造業が海外移転を加速するのは当然で、状況は一気に重篤化すると予測する。
暗い話が続き恐縮であるが、今朝の松本氏のアゴラ記事、どうすれば「スマート」になれるのか?等を読んでも、本来、今世紀の日本を背負って立つべき「情報産業」も墜落寸前の様で、これでは雇用の創造は期待出来ない。
現政権は経済政策に於いて失策を続けており、真面な雇用は消失している。
そんな折りも折り、川端総務相は出張先のロンドンで「今後国際的に普及の拡大が予想されているスマートテレビの国際規格作りを日本が主導していく」と記者団に語ったらしい。これについて、多田光宏さんは、「日の丸スマートテレビ(笑)」と題する5月4日付のアゴラの記事で「アホか、馬鹿か」と痛罵しておられるが、私もほぼ同じ気持だ(現在の私の立場では直接口には出せないが…)。この様な発想が出てくる事自体、日本国の上層部が未だに問題の本質を一向に分かっていない事を如実に示している。
その結果、我々の眼前にあるのは、近い将来の退職を前提とした「仮の雇用」ばかりである。
この様な環境下で、大学に設置されたハローワークに対し、相談に来た大学生の就職内定率のターゲットを設定すればどういう結果になるかは明らかである。
大学や大学生に対し、大変失礼な事を申し上げるのかも知れないが、「不良在庫」を抱えた製造メーカーがバッタ屋を呼び、半値八掛け二割引き=メーカー希望価格の32%、で投げ売りするのと同じ事が起こると想像するのである。
営業マンと言う肩書で、個別に家庭を訪問しての法外な価格の「英会話教材」の手売り販売。
最近、過労死事件を引き起こし国民の耳目を集めた居酒屋チェーン。
NHK委託会社員の肩書で「受信契約」の締結。勿論、こんな話は氷山の一角に過ぎない。
NHKの受信料契約を担当する委託会社の契約社員の男性が、鹿児島県霧島市の男性の衛星放送契約書を勝手に書き、半年分の受信料が引き落とされていたことがわかった。契約社員は不正を認めているという。
鹿児島放送局によると、契約社員は2~3月に男性宅を数回訪問。契約書は2月29日付で、契約社員が男性の名前や住所を記入、印鑑も押したという。男性は地上波の契約はしていた。2~7月分の衛星放送受信料5440円が男性の口座からNHK名義で引き落とされているのに家族が気づき、「両親は手続きした覚えはないと言っている。どういうことか」と、NHKコールセンターに問い合わせてわかった。
成程、ハローワークの助けを借り、こんな企業であっても学生が就職出来れば大学としては「高い就職内定率」の数字を得る事が出来る。
しかしながら、当然の事であるが、気の毒なのは何れ退職を余儀なくされる事が確実な大学生である。「ブラック企業」勤務の職歴のみでは、望む企業への転職は殆ど不可能であり、結果、更に「ブラック」な企業に転職せざるを得ないのではないか?サラ金の利用者が「闇金」利用者に転落している構図に似ているのかも知れない。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役