「派遣労働=ピンハネ」と決め付ける人が多いが、建設業などにおける暴力団関係者の手配師などを除くと派遣産業はむしろピンハネが発生しづらい業界ではないかと私は思う。
なぜならピンハネすれば派遣会社が必ずしも儲かるとは限らないからだ。
スーパーがチョコレートを売る例を考える。1個百円で利益が十円のチョコレートを値上げして110円にすれば1個辺りの利益は2倍の20円という事になる。
値上げすれば儲けが増えるかというと、もし売れる個数が半分以下になれば逆に全体の利益は下がる事になる。
同じ事が派遣業についても言えるが、不当にマージン率を上げれば派遣社員の給料が減って当然質は落ちる。バブル期の様に誰でもよいならともかく「あそこの派遣社員は質が低い」という評判になれば客は減る。
売り手市場なら話は別だが、派遣先企業としてみれば直接雇用という選択肢もある訳で派遣会社がそんなに強い立場にあるとは思えない。
そういう状況でピンハネなどしたら競合他社との競争に勝てないから極端なピンハネは発生しづらいと思う。
それではなぜ派遣業界がピンハネの代名詞の様に言われているのか。思い付く例を挙げる。
1.ピンハネがあれば分かり易い業界だから。
2.マージン率が高いから
3.弱小業界なので責め易い
1.についてだが、そもそもピンハネはあらゆる企業で存在し得る訳だが、多くの会社員はチームワークで成り立っているので車や生命保険のセールスマンなどを除いて給料の額の正当性を客観的に評価するのは難しい場合が多い。
例えば日産車のエンジンを設計している技術者が幾ら貰うべきかと問われても会社と社員の力関係で決まってしまうので正当な額を客観的に決めるのは難しいし、仮に素人が明細を見たところで給料が正当かどうか判断できないだろう。
その点、マージン率という分かり易い数字がある派遣業界ではピンハネ額がイメージし易い。
2.のマージン率については本当かどうか知らないが中には50%程度取っている派遣会社があるという噂もあるが、一般に日本の派遣会社のマージン率は欧州などのデータと比べてかなり高い事からピンハネと判断する人もいるようだ。
しかし、逆に言うと分母が小さい、つまり派遣先が派遣会社に渡す金額が小さいからマージン額は正当だが、結果的にマージン率が高くなっている可能性もあるのではないか。或いは経営効率が悪いためにピンハネはないが、マージン率が高くなっている可能性もある。
3.についてだが、1.で直接雇用の場合のピンハネが分かり難い事を説明したが、分かり易い場合でも見逃される場合がある。
例えばサービス残業などがある。大企業の正社員でもサービス残業が日常的に行われている事はよくあるが、マスコミは積極的に叩かない。
それは恐いからだろう。強力な法務部を要する大手メーカーなどを糾弾すれば訴訟に持ち込まれたり宣伝費を削られたりする恐れがある。
その点、派遣業界は弱小勢力に過ぎないので安心して叩けるという面があるのではないか。
これで派遣問題について私は3作投稿したが、いずれも私のサイト ある作家のホームページ>社会科学>派遣労働問題を考える を編集したものなので、これまでの流れを知りたい方や興味のある方はそちらをご覧頂きたい。