重篤化する世界の失業問題

山口 巌

BBCが伝える所では、米雇用統計の予想以上の悪化を受け、ニューヨーク株式市場が大幅に下落との事である。とは言え、アメリカの失業率は8.2%で、欧州の11%よりは幾分ましである。こう言う背景から、昨日は欧米の株価が大きく下落した訳である。

Market Data
Last Updated at 20:58 GMT Market index Current value Trend Variation % variation
Dow Jones 12118.57 Down -274.88 -2.22%
Nasdaq 2747.48 Down -79.86 -2.82%
FTSE 100 5260.19 Down -60.67 -1.14%
Dax 6050.29 Down -214.09 -3.42%
Cac 40 2950.47 Down -66.54 -2.21%
BBC Global 30 5867.55 Down -41.46 -0.70%

世界の株価は年末に向け、この先もだらだら一直線に下げて行くのであろうか?仮にそう言う展開となれば、失業は更に増加し、個人消費は低迷し、世界経済は破綻に向かい突き進む事になる。

日本の政治家とは違い、流石アメリカの大統領である。この状況を受け、オバマ氏は、雇用創出の為なら何でもやりますよの勢いで、下記発言である。

“There is no excuse when so many people are looking for work. Now is not the time to play politics, not the time to sit on your hands,” he said.He highlighted measures to prevent more layoffs, proposed legislation to put construction workers back in work, tax breaks for small companies to help them hire more staff and measures to help homeowners refinance their mortgages.

政局を弄んでいる場合か!と言うのは日本でもそっくり当て嵌まる。「電力問題」と言う、雇用に直結する部分でも、日本の政治家がやっている事は「票乞食」としての、「票」を求めてのパーフォーマンスに過ぎない。

失業問題に関連して、WSJに気になる記事を見つけた。対日LNG輸出を見合わせ 米政府 国内価格への影響調査である。

何と、高値で買い取る日本に液化天然ガスを輸出すると、国内価格が上昇するので当面は見合わすと言うのである。「市場主義経済」を標榜するアメリカ政府の発言とはとても思えない。まるで、一昔前のどこかの社会主義国政府の説明に聞こえる。

思うに、アメリカ政府としては液化天然ガス料金を安く抑える事で、安価な電力を製造業に供給し、この事で製造業の雇用創出の後押しをする積りと推測する。古くなり、手垢の付いた「市場主義経済」の旗をさっさと下ろし、代って、「国益重視」、「雇用第一」の旗を上げたのである。

最新のエネ庁資料に依ればアメリカの電力価格は民生、産業用共に日本の半分程度である。日本は原発を停止して、高価な液化天然ガスを追加で輸入したり、法外なコストの太陽光発電を開始したりで、今後、益々電力料金は高騰すると思うが。

更に、看過出来ないのはここ半年の関西電力管内地方自治体首長の無責任極まりない対応である。大飯原発再開に意味不明な反対をし、停電が起こっても知った事では無いと言った対応であった。

オバマ大統領が知ったら、口から泡を吹く位驚くに違いない。何故、製造業、牽いては地域に暮らす住民の「雇用」や、そこから来る個々の生活を此処迄無視するのか?

アメリカで、オバマ大統領が声を嗄らして雇用問題に取り組んでいる時に、自分が統治する地域を「停電」に誘導する意味が、果たして判っているのであろうか?

地域製造業は、今後政治を信用せず海外への流出が加速する筈である。その副作用は、勿論雇用の消失と、そこから来る「失業」である。日本の大失業時代は関西から始まるのではないか?

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役