東京は生活費世界一? --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

昨年もお伝えしたマーサーの駐在員生活ランキング。2012年度のランキングが発表され、東京が首位奪取となりました。ご記憶にあるかと思いますが、昨年の1位だったアンゴラのルアンダ2位に転落となり、第3位には大阪が6位から赤丸急上昇となっています。

マーサーは著名なコンサルティング会社で同社が世界214都市の駐在員の生活費を米ドル建てで比較したものであります。東京や大阪がランクを上げたのは円高ドル安が効いていると思います。ちなみに2ベッドルームの賃料は東京が4800ドル(約385000円)/月であるのに対して香港では約7100ドル、ルアンダは6500ドルとなっています。つまり、不動産(家賃)だけを見れば東京はさほど高くないわけですが、例えばジーンズが150ドル(12000円)という評価が一般的な数字かどうかはなんとも言えません。


昨年も同様のコメントを出させていただいたと思いますが、米ドル建ての比較である結果、数字に偏りが出てしまっているというのが正直なところで米ドルの本家本元ニューヨークはちなみに33位で昨年比ひとつランクダウン。大きく動いているのはオーストラリアの主要都市が軒並み10前後のランクアップとなっているのに対してヨーロッパの主要都市は大きくランクを下げています。

私が時々日本に来て物価が高いと感じるかと言われればそういうところに行けばお金がかかる、という表現が一番確かで、使わないですごしたければかなり節約モードが可能ですし、その気になればお金に羽を生やして飛んでいかせることも可能であります。事実、普通の勤め人は500円とかせいぜい1000円のランチで会社帰りのチョイ飲みも数千円で収まっている場合がほとんどだと思います。むしろ独身女性の方が消費リーダー的な感じがします。

私が東京に来て意識しているのは消費を多少我慢するということかと思います。バンクーバーのように消費意欲を全く掻き立たせないところから東京に来ると天国そのものでありまして、行くところ、入る店、すべての商品がそれなりに唸らせるものばかりなのです。そういう意味では「世界で一番お金を使いたくなる都市ランキング」であれば東京を絶対的自信をもって推奨いたします。

ジーンズが150ドルだと評価される理由のひとつは外国人への情報が充分に伝わっていないこと、そして駐在員の生活範囲が極めて狭いところに凝縮されているからではないでしょうか? 山手線の内側の特に外資系が集まるようなエリアでは普通の日本人が「たまの贅沢」を楽しみにいくぐらいの感覚のところですが駐在員はそういうところで普通に生活するわけです。もしも駐在員の生活範囲が新宿や池袋などもっと庶民的なエリアまで拡大すれば評価対象の物価は下ると思いますし、東京の生活イメージも大きく変貌するでしょう。どちらかというと外国人向け高級住宅が一定エリアに集中していることで日本人の本当の生活観とかけ離れたものになっているのだろうと思います。

こういう形で世界の人たちに「物価が高い東京」と思われるのは外国人観光客を増やそうとする日本政府の方針には大いに問題がありそうですね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。