レアアース鉱床の発見が日本にもたらすもの --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

大きな、そして嬉しいニュースが飛び込んできました。

東大の研究チームにより南鳥島周辺に大量のレアアースを含む大鉱床を発見、日本国内消費量の200年分はあるとのことです。


レアアースに関しては中国におととし以降、輸出停止や輸出量を絞るなどさまざま難問を吹っかけられました。それに対応するため、それまでほとんど中国からの産出に頼っていたものをアメリカやオーストラリアを含む調達先の複数化やリスク分散をしてきました。更に一部製品においてはレアアースの使用量を極度に減らしたり、或いはまったく使わないで対応する商品を開発するなど日本は本気になって本件に立ち向かってきました。

その努力が別の形となって報われたとも言える今回の大鉱床の発見は日本の資源政策に安堵の声をもたらすことになると思います。もちろん、この大鉱床を今後、どうやって採掘するかなどさまざまな難関は立ちはだかると思いますが、日本の技術陣ならば必ずやそのハードルを乗り越えてくれると思います。

また、ご承知の方も多いと思いますが、日本海、太平洋側共に世界有数のメタンハイドレードの埋蔵が確認されています。日本は今まで海がより深い太平洋側の方に大幅な予算を振り向けてその研究、開発をしていました。

ところが、どうも浅い日本海側の方が取り出しやすいという話もあるものの「予算を太平洋側に振り向けた」経緯からやりやすい日本海側が遅れているという事情があるようです。

また、メタンハイドレードの開発はアメリカが邪魔をする可能性は大いにあります。なぜなら、アメリカにしてみればようやくシェールガス革命で自国消費を充足し且輸出を通じて稼ぐことが出来るところにこぎつけたのに大消費国日本が自前の燃料を確保することになればアメリカ側にベネフィットが少なくなるからです。政治的圧力が今後一層強まる公算はあるかと思います。よって、日本政府としてはこの開発が国際間摩擦の対象にならないようすることが今後の最重点課題となるでしょう。

レアアースについては実は世界のあちらこちらで産出していたのですが、その昔、中国が安値攻勢を掛けたため他の国のレアアースが価格競争力を失い、その結果として採掘をやめていたというのがストーリーです。よって、この1~2年に採掘を開始する準備を進めてきたわけですが、世界需要も増えてきているため中国の優位性は保たれていました。

仮に日本の近海からレアアースが大量に産出されるとなればその産出されるレアアースの品目については世界の相場が大幅に変動することが予想され、中国はその影響をもろに受けることになります。当然ながらこちらについてもそれなりの政治的嫌がらせなりが起きる可能性は否定できませんので日本は浮き足立つことなく心して取り掛かる必要があるといえましょう。

日本は資源がない国家と言われ続けましたがこの数年、日本の周りの海底にさまざまな資源が眠っていることが発見されてきました。これはある意味、我々が教科書で習った日本の位置づけが大きく変化することになります。考えてみれば海底はアクセスしにくいわけで技術の発展が待たれたためでそれがようやく花咲き始めたということです。

我々の未来は明るいものになるという期待をしたいものですね。

今日はこのぐらいにしましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。