シャープの苦悩は何時まで続くのか? --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

日経ウェブ版に「シャープが震える鴻海の圧力」という長文の記事が出ていました。正直生々しく、下手な小説を読むより迫力があります。

そこに出てくるキーワードは「我々は対等なパートナーではなかったのか」。

私はこれを聞いてあぁ、あのケースにそっくりだと思いました。


そう、軽自動車の雄、スズキとフォルックスワーゲンの提携話。お互いに対等な関係で双方のよいところを取り込みながら成長できる関係になろうと夢見た鈴木修会長。が、それは僅か1年9ヶ月でなんら実を結ぶことなくスズキから別れ話を持ち出しました。「別れたんだからスズキの株式19.9%を返してよ」とフォルックスワーゲンに訴えているのですが、VWは「そんなの知るか」という態度。国際仲裁裁判所でアービトレーションとなるのでしょうか?

日本企業は海外の企業に対してわきが甘いことが本当に多いと思います。何故対等なパートナーなどという言葉を信じているのかその常識が私には理解できません。海外のビジネスは生きるか死ぬか、騙すか騙されるか、相手を食うか自分が食われるか、という恐竜時代に生きる動物のようなものです。ニコニコして握手され、体の良い言葉を並べられて「一緒にやっていこう」という受動的提携を結んだら最後、会社はなくなると思って良いでしょう。

海外の会社と一緒にやるなら自社が能動的にリーダーシップを取り、最後は相手の会社を分捕るぐらいの勢いでないと自社の売り上げや利益を確保することはまず出来ません。

私はシャープが鴻海と提携を発表した直後の3月29日のブログで「シャープの経営が鴻海に引っ張られることになる」と指摘しています。これは力関係において主従が完全に明確であり、どうやっても鴻海の下請けとしかシャープは機能しないのです。ですので、今回、日経の記事を読んでシャープの幹部はずいぶん寝ぼけたことを言っているな、と思った次第です。

再三申し上げますが、シャープは家電御三家からは離脱し、完全に違う道を歩む会社となります。鴻海と対等な関係など実態としてはまずありえないことです。そういう点では会社が行き詰るほど垂直型経営を進めた町田勝彦前会長が鴻海を連れてきたわけですから氏の「一人劇場」であり、片山幹雄前社長は町田氏に踊らされたということかもしれません。

よって、ブログのタイトルに「シャープの苦悩は何時まで続くのか」と書きましたが答えはずっと続く、ということになります。

私がここまで強く書くのは今後も海外からのスィートオファーが日本企業にいろいろ行われると思いますが、その際に受動的提携を結ぶとこういう状況になるということをわかっていただきたいと思っているのです。日本企業がおいしい子羊に見えるその理由はチーム経営だけに論理的に押し込めば買収や提携なら案外落としやすい弱みがあるということを指摘して今日は終わりにしましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。