朝日新聞に依ると、富士フイルム、化粧品事業5倍に 18年度の売上高目標との事である。
富士フイルムは4日、化粧品事業の売上高を、2018年度に現在の約5倍にあたる約700億円に増やす方針を発表した。写真フィルム事業で築いた世界的な知名度を生かし、欧州やアジアでの販売を本格化させるという。
家電を筆頭に暗い話が続く日本の製造業にあっては、久々の明るい話、朗報である。2018年とスケジュールを明確に区切っている点、売上高5倍と数値目標を明確にしてる所に、同社の並々ならぬ自信を感じる。苦労の多かった、化粧品事業の開拓期、揺籃期が終了し愈々これから成長期に移行する事を確信したのだと推測する。
私は半年前に、The Economistの記事に触発され、富士フィルムとコダックの明暗を別けたものをアゴラに投稿している。その際も、同社の長所を下記指摘している。
富士フィルムが奇跡を起こしたと賞讃すべきと思う。この奇跡を起こした古森氏は、2000年に富士フィルム社長に就任している。飽く迄、推測であるが社長就任に際し、富士フィルム破綻までXXX日と仮定し、破綻回避の為、出来る事、やるべき事を、愚直に熟されて来たと思う。
今回、同社の強みは、「何時迄」に、「何」をやるかを決定し、「ぶれる」事無く、「愚直」に実践し続ける事であると改めて痛感した。
今一つの強みは、甘い話に釣られて闇雲に新規事業に進出するのではなく、世界を席巻したフィルムで確立した技術の用途開発に依り、新たなスキンケア化粧品を世に送り出す事に成功した事実に示されている。勿論、化粧品と言う利益率の各段に大きな商品に特化出来た事も、同社の将来を明るいものにしている。
同社の化粧品は、コラーゲンでフィルムの劣化を防ぐ技術などを応用したもの。
そして、如何に優れた商品の開発に成功しようとも売上を短期で伸ばす為には、「国内・海外ネットワーク」や「商流」の確立が必要となる。これ等に取り組み中のベンチャー企業等が、同社のネットワークを見ればさぞかし溜息をつく事であろう。海外のネットワークは既に確立したものが存在する。間違いなく同社の強みである。
歴史のある製造業に取って悩ましいのは、「何」を残し、「何」を切り捨てるかの選択である。そして、「技術」であれ、「ネットワーク」であれ、残す決断をした対象のROEVの最大化をどうやって図るかである。
富士フイルムは国内に「本社」、「研究所」、そして「工場」を持つ製造業のお手本になるのではないか?
山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役