バンクーバー繁華街にみる小売業の曲がり角 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

バンクーバーの目抜き通りであるロブソン通りに異変が起きています。歩けばFor Leaseの看板ばかり。更にバンクーバーで最も価値の高いサーロー通りとの交差点にあったスターバックスがなくなりましたし、バラード通りとの交差点にあったHMVの跡もテナントが決まりません。

さらに、東に行ったシアーズも撤退することになっており、それ以外の小さな店舗スペースを含め実に寂しい状態が生じています。


ロブソン通りは小売業にとってはサテライト店としてマーケティングや宣伝効果を狙った出店が歴史的に多く、いわゆる「チェーン店の顔」としての役割がありました。一方、長年言われてきたのがロブソンのリーテールは儲からないという点です。理由はその賃料に対して見合いの収入が得られないことなのですが、私の実感としてはロブソンに面した店舗の売り上げは近年更に悪化している可能性があります。

理由は郊外のビックボックス/ショッピングモールには何処でもロブソンと同じチェーンの店が立ち並び、わざわざロブソン通りまで買い物に来る必要がありません。また、バンクーバーは雨季はしとしと雨が降り続きますので屋根のない路面店よりモールのほうが買い物には相応しいということになります。

更に大都市の目抜き通りであれば本来ならば有名デザイナーズブランドが立ち並ぶはずなのですが、ティファニーやルイヴィトンをはじめ数々のブランド店はロブソンから1ブロックはなれた一昔前の「日本人お土産御用達通り」だったアルバーニ通り近辺に固まっています。

ではロブソンにはどんな店舗が並ぶかといえば地元紙の編集委員に言わせれば「ルルレモン、マウンテンイクイップメント、ウィナーズ」を含むイメージに近い店舗群ということです。これのイメージは観光客に魅力的なウキウキさせるものとは思えず、正直、かなり辛らつでロブソンの価値を遺棄するほどの厳しい表現であります。それはロブソン通りそのものに対する改善やアップグレードを行ってこなかった市役所やロブソンストリートビジネス協会の怠慢であるともいえましょう。

たとえば狭い歩道、雑多で統一感のないイメージは本来であれば都市計画の一環として大規模な投資を含めたリバイタリゼーションが行われなくてはいけませんでした。が、実際はそれとは逆行し、例えば夏の間は終日アートギャラリーの前を車両通行止めにしてしまっているため、バスを含めた交通の寸断化を行っています。当然ながら利便性を含め、交通量の減少はビジネスに直接的に影響するはずです。

夏のこの時期でもレストランは空いていることが多く、私が好きな某有名レストランも夜9時過ぎになれば客ゼロということもしばしばです。

ロブソン通りに不動産を持つ大家も強気一辺倒でしたが、今年は昨年に比べ家賃が25%下がっているともいわれています。それでもあのスターバックスですらリース更新を諦めなくてはいけない状況であるというのは賃料が高いのか、客が少ないのか、その両方なのか、なんとも微妙なものであります。

今日の話はバンクーバーの目抜き通りの例でありますが、ネットショッピングが進む中で店舗の価値感と存在意義は地球規模で見直さなくてはいけないことなのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。