租税競争で地方は活性化する

池田 信夫

大阪維新の会の公約する「維新八策」の柱は、消費税の地方税化である。これについて以前、私がツイッターで「都道府県ごとに消費税率が違うと大混乱になる」と批判したところ、橋下市長は「知事会で統一すればいい」と答えた。しかしこれだと自由な財源にはならないし、増税に反対する府県が多いと引き上げられない。東京都の石原都知事も「都道府県が決めると混乱が起こる」と否定的だ。


それより私は、法人税をすべて地方税にすることを推奨したい。いま日本の直面している危機は、新興国との競争の激化によって製造業が海外に移転していることだが、これは税制で止めることができる。今は法人事業税(地方税)は全体の1/4程度だが、これをすべて地方税にして、都道府県が税率を自由に設定できるようにするのだ。


日本の法人税(実効税率)は図のようにアメリカと並んで世界最高であり、昨年度の税制改正で引き下げが決まったが、震災で凍結されてしまった。オバマ政権は連邦法人税率を28%(製造業は25%)に下げる方針を打ち出したので、このままでは日本は取り残される。他方、EUでは租税競争が起こり、ここ10年で法人税率が10%下がったが、税収はほとんど変わらない。企業の流出が減ったからだ。

アメリカでも州の法人税率は大きく違い、デラウェア州はゼロなので、NY証券取引所の上場企業の半分はデラウェア州に本社を置いている。日本でも法人税をすべて地方財源にして各府県が租税競争で企業誘致すれば、経済が活性化するだろう。たとえば大阪が法人税率を10%にすれば、シンガポールや台湾の13%より低くなるので、アジアの金融センターになることも不可能ではない。現在の制度でも、法人事業税を廃止するだけで28%程度まで下げられる。

あす発売の週刊ダイヤモンドでも言ったことだが、日本の最大の経済問題は「デフレ」ではなく、新興国との競争である。その対策としては政府が「成長戦略」などと称して経済に介入するより、税制のゆがみを是正するほうが効果的だ。法人税の引き下げは「大企業優遇だ」とかいう反発が予想されるが、高い法人税で企業が海外逃避すると雇用が失われ、結局は労働者も損をするのだ。