ではいったい何をすべきか (中) 景気対策をするべきでない理由

小幡 績

景気対策をするべきでない理由の第一は、景気がよいからである。

現在景気が悪い、という認識は誤っている。


景気動向指数から言っても、景気はトレンドとしては改善を続けているし、失業率から言っても、4.4%に低下しており、完全失業者数も24ヶ月連続で減少を続けている。

それでも政治家たちは景気が悪いというし、消費税を上げることは社会保障の充実から必要であるが、景気がよくなるまで引き上げは延期すべきだという。それは増税をせずに社会保障は強化する、という短期的ないいとこどりの選挙対策ではあるが、本気で景気が悪いと思っている人々も多いのでやっかいである。

彼らによれば、バブル崩壊後、日本は景気が悪いままであることになり、それは22年続いていることになる。2006年にゼロ金利を脱却したときも、まだ早い、東京以外は悪いといい続けた。

22年続けば、それは短期的な景気のサイクルが悪いのではなく、経済の構造の問題である。だから、景気対策をしてはいけないのであり、景気対策に資源を使った結果、構造改革が出来なかったのである。

景気対策とは、短期の所得対策か短期の雇用対策である。つまり、カネか職を短期にばら撒くことである。しかし、それはばら撒くだけであるから、タマが尽きた瞬間に効果がなくなるから、元に戻ってしまうか、あるいは反動で景気はさらに悪くなる。なぜなら、短期の仕事に従事すると、人的資本の蓄積が起こらず、長期的な雇用の可能性が低下するからである。

したがって、景気対策をやめ、経済の構造改革、長期の雇用政策を行うべきなのである。

これが政治家に人気のない理由は、短期には結果が出ないことと、この議論を聞いたことがないことである。

前者は仕方のないこととして、後者については、改善の余地がある。なぜなら、有識者でない有識者が政治家の近くに多数いて、彼らがその説明をしないからである。したがって、この議論をしつこく広めることは効果があるといえる。

したがって、景気は現状はよく、問題は、長期の経済構造問題であり、それは地方における雇用、とりわけ若年雇用の問題である。この議論を広める必要がある。

景気がいい、というだけで、政界どころか、論壇からも排除されるであろうが、その点については、政権与党に大しては、チャンスがあると考えられ、彼らに重点的にアプローチするべき、ということになる。この与党には、潜在的な与党も含まれる。