NEC(日本電気)の株価が100円を割り、記録のある1977年以来初の事態となったようです。業績はNECが35%株主の半導体大手、ルネサスが厳しい状況に追い込まれているからとはいえ、来期は200億円の黒字を確保するというのに寂しい限りです。同じことはソニーにもいえそうで、32年ぶりの安値をうろついています。80年代に電機業界は破竹の勢いだったものがすっかり削がれてしまい、今後の回復を期待はしていますが、あの頃の強さを何処まで期待できるか市場は疑心暗鬼というところでしょうか?
自動車も全般的には海外での製造拠点の開発に忙しく、国内は絞込みが続いています。トヨタ、日産のような大手に目が行きやすいのですが例えばマツダは苦境に陥っています。こちらも株価は見たことのない領域の100円割れを継続しています。特にこの会社の場合、今年3月に1600億円強も増資による資金調達を行いましたが、同社の場合、フォードという後ろ盾をなくしていますので今後、現在の独立路線をどう軌道修正していくかが落とし所だと思うのですが、どうもこの会社もホンダと同様、他社と手を組むのが好きではなさそうで正直、心配しております。
こう見ると日本の産業のリーダーは戦後の歴史の流れからすると繊維、鉄鋼、建設/不動産、電機、ITと移り変わってきていますが、現時点でどれも旬はすっかり過ぎ去っているように見えます。メジャー路線ではないのですが素材産業で個別に頑張っているところはありますが、華やかだった昔がウソのように思えてきます。
この状態において「次」を求めるのは実に難しいのですが、私はある意味、老朽化が進んだインフラのアップグレードなど内需に救いを求めることを真剣に検討せざるをえないような気がしてきました。例えば首都高速道路。総延長300キロのうち建設から40年経つところが30%もあり、一案には地下40メートルに新設し、地上の有効活用という案もあるようです。
また、東京には都市計画の中に緑地を積極的に取り込まなかったこともあり、世界の主要都市と比べ緑地面積が貧弱です。あるいは道路の歩道は狭く、自転車と歩行者がぶつかりやすいなど都市計画の基本がまだまだ充実していません。更には電柱。これも街を狭く見せ、見栄えも非常に悪くしています。海外では地中に埋めるのが主流になってきている中で日本はこちらも立ち遅れています。
これらインフラなどの整備は当然やろうとすれば頭に浮かぶのは税金ということになると思いますが、例えばここ、バンクーバーの場合、不動産デベロッパーが費用負担をしたり、義務工事としてインフラを整備し続けています。結果として当局はほとんど出費なく、インフラだけがどんどんアップグレードされていくのです。私もここでの住宅開発で開発費用の7-8%にも相当する64ミリオンドル(51億円)を開発地周辺のインフラ整備と寄付金として捻出したのです。
結果としてそれらのコストは住宅購入者に住宅価格として転嫁されているのですが、購入者はインフラが整備されたものを買うわけですから直接的ベネフィットを享受できます。これを税金で行えばその周辺に住む人と住まない人では恩恵に差が出ますし税金の支出という面倒なプロセスを踏まざるをえません。この辺りがバンクーバーの都市整備が上手にかつ、世界で一番住みやすい街を作り上げた理由だと思うのです。
日本もコストに転嫁するなどの方法はあるはずです。それがウィンーウィンであれば日本にとってメリットある話になるような気がいたします。こんなアイディアを持ち出しながら日本の再活性化が進んでくれればよいかと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。