もてるオリンパスは誰と共に歩むのか? --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

不思議なものであれだけ大騒ぎしたオリンパス事件も僅か、8ヶ月程度で争奪戦へと変貌するものかと思ったりします。考えてみれば昨年11月に問題が発覚した際、それまでゴールドマンなどは買い推奨していた株価は崩落、上場維持が問われる中で投資家は悪夢を見ました。


しかし、私は早い時期からこの会社の上場廃止はない、と見ていました。当局に「そのつもり」がもともとなかったような気配がありました。事実、本業とは関係ないレベルの一部の経営幹部が行った不始末という形で処理され、法人という人格は温存されたわけです。それはオリンパスが持つ高い医療機器の技術力と内視鏡の世界市場でのシェアを考えれば潰すわけにはいかないと思ったのでしょう。

面白いことに堀江貴文氏が獄中手記で「ライブドアとどう違うのか」と問題を提起させながらもライブドアが上場廃止になったことによる新興市場の壊滅的打撃を考えれば証券当局は簡単にオリンパスを上場廃止に持っていけない理由が存在したはずだ、としています。確かに当時、外国人投資家から上場廃止にする理由はないと強いボイスがあったし、本件自身がイギリスやアメリカから背中を押さされた形での調査、審査となったことが保守的判断を下す結果になった気がします。

さて、そのオリンパス、上場維持が決まり、経営陣が刷新され、次に4.6%という低い自己資本比率を改善するための大きな決断をするところにあります。

私は以前、オリンパスは他のブラッドを受け入れたくないのではないか、ということを書きました。つまり、時間こそかかるけれど自主再建の道もあるかもしれないと考えました。理由は同社の閉鎖的社風にあると見ています。

しかし、これだけ話題になった会社であるだけに社内の我侭ばかりが通るわけでもありません。事実、提携したいとラブコールを送っている会社は4~5社あるわけでその中でもソニーは最も積極的であり、ベストポジションにあるとされています。ご承知のおとり、ソニーも窮地に陥っているわけで医療産業に踏み込みたい同社とカメラ部門で強みを持つソニーの力を借りたいオリンパスとは確かに補完関係にあるかもしれません。

が、7月26日に日経トップですっぱ抜かれたテルモによる経営統合案はオリンパス側の意向とはまったく関係なく発表された新案でこれがオリンパス経営陣の判断にどう影響するか、実に見ものであります。

こういうケースはそうそうあるわけではないので私は自分がオリンパスの社長ならどう判断するかと考えめぐらせてみました。

少ない情報の中で考える限り、私はテルモとの経営統合が本筋論からすれば当たっているような気がします。

まず、オリンパスは医療機器メーカーであること。デジカメは派生ビジネスで赤字であること。テルモはもともと株主であり、それなりの関係はあったこと。テルモとの統合で世界ランクはオリンパス16位、テルモ20位から10位以内に躍進できる可能性があること。

一方、ソニーの出資を受け入れるメリットはオリンパスが医療分野で自分の領域を荒らされないこと、赤字のデジカメの対策を打てることぐらいでしょう。

今、巷でソニーが有利とされる最大の理由は私の見立てではオリンパスの社内には荒波が立たないということかと思います。だとすればそれが選択間違いであることは自明の理なのですが、残念ながら私は株主ではないのでこれ以上意見することはできません。

ソニーはオリンパスをお客様扱い。テルモは兄弟扱いします。グローバリゼーションが進む経済、そして、医薬品メーカーは淘汰がどんどん進んでいる中で医療機器メーカーがのんびりしていては競争に負けてしまうような気がします。

テルモは面白い案を提示したと思います。今後の展開が実に楽しみです。

今日はこのぐらいにしましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。