楽しめた、米国でのオリンピックのネット配信

山田 肇

8月12日付けの日本経済新聞に「ネット配信で放送補完、米メディアが連動策、五輪やドラマ、視聴者獲得手応え」という記事が出ていた。オリンピックの期間、米国で実際にネット配信を楽しんだので、三点ほど記事を補っておきたい。

記事に書かれていない重要な点は、米国では放送権をNBCだけが持っていたことだ。わが国では、ある局がレスリングを放送しているとき他局はマラソンを中継するというように、複数局で複数の競技が同時に中継されていた。NHKと民放が共同して放送権を獲得し、番組を調整した結果である。一方、米国で放送できるのはNBCだけだが、コンテンツ(競技)は放送可能時間を越えるので、それをネット配信に提供していたわけだ。

おかげで、なでしこジャパンの準決勝のように、米国内では絶対に放送されない競技も生で視聴できた。


第二はネット配信にも広告がついていたこと。競技開始前や中間の休憩時間には広告が流れ、ストリーミング(録画)でもスキップできない。また画面の上部にはストリーミングでもサイマル(生中継)でも広告が出っぱなしになっていた。記事には「赤字を見込んでいた収支はテレビの広告収入が計画を大幅に上回り」とあったが、ネット広告も収支に寄与したはずだ。

ちなみに、ストリーミングでは映像の一時停止が頻発したが、サイマルではそのような問題はほとんど起きなかった。

第三はネット中継を担当した側にも利益があったこと。ネット経由で視聴できたのはCATV等の加入者に限られていたので、加入者勧誘に利用できたわけだ。ただし自宅でなくても、IDとパスワードを入力しさえすれば、どんなブロードバンド回線経由でも視聴できた。つまり、いつでもどこでもオリンピック中継を楽しむことができたわけだ。

優良コンテンツであるオリンピックに比べれば劣るかもしれないが、テレビ局には過去に放送した番組を含め膨大なコンテンツがある。それらをネット配信して放送を補完することは確実にビジネスになると、米国でオリンピック中継を楽しみながら感じた。

山田肇 -東洋大学経済学部-