家電量販店は環境適応できるか --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

以前から不思議に思っていることがあります。それは日本に行く際、本拠地に近い池袋に行くとビックカメラとヤマダ電機の激しい戦いが駅東口で行われているのですが、なぜ、そこまで拡大店舗政策を取らなくてはいけないのか、また、このトレンドは維持できるのか、という点であります。


確かに今でも曜日や時間帯によっては黒山の人だかりで店員を捉まえるにも苦労するのですが、時間を均してみればここまで巨大店が複数、隣接してなくてはいけないのか、という素朴な疑問があります。確かに昔からターミナル駅前には複数のデパートが存在し、繁栄の時代を築いていました。その点からすれば複数の家電量販店が競合するのもおかしくないといえるかもしれません。

今は家電量販店がデパートのポジションをテイクオーバーしているという事でしょう。事実、有楽町でも池袋でもデパートが家電量販店に変わっています。しかし、今後、永続的にその繁栄を築けるか、といえば私はNOだと思っています。なぜならばいくら新しいものを欲しがる日本人だとしてもそろそろそのペースダウンがあってもおかしくないはずなのです。理由はいまや十分に性能がよい電気製品が溢れ返り、寿命は延び、製品としての見劣りもしなくなっていているからです。

例えば、自動車を考えてみてください。昔は自動車そのものが進化過程にありました。人々の収入の増加とともに車も進化したわけです。ところが一定のところでそのインタレストは変わりました。より実用的になってきたと。それはともに成熟したからです。

同じことが家電業界にもいえるのではないかという気がするのです。特にITの進化は消費者の疲弊感も含め、そろそろ成熟期に入るとしたらこのまま、家電量販店が繁盛するシナリオはないと思うのです。

その中で業界ではヤマダ電機がベスト電器を抱き込み、業界一位の座を安定的にする戦略に出ています。ただ、日経ビジネスを読む限り、ベスト電器はなかなか社内内部が大変そうでそれをヤマダの傘下としてどうやってものにしていくのか、ある意味、規模の追求が仇にならなければよいと思っています。

一方でヤマダ電機も一般的な家電量販店から次のステップに向かっているのは明白で例えば住宅会社のエスバイエルを買収し、スマートハウスを取り込む姿勢や太陽光パネルの積極的販売展開はその典型だといえます。今後、いわゆるスマート○○と称するものをビジネスの中心に据えていくことで差別化を図ることになればその家電量販店が環境適応できる企業だということでもあります。

家電もネットで購入する層が今後も増大するとすれば店舗というアセットを維持するハンディは大きいと思います。ヤマダ電機をデートコースにするカップルも多いそうですが、アセット=来店客からのリターンが今後、家電量販店の勝敗のキーになるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年8月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。